「子ども連れで水炊き店に行こうとしたら、断られました」。福岡市の男性から、こんな声が西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。同市などにある水炊きやもつ鍋の合計8店に聞くと、多くが子ども連れ可能だった一方、多様な客層の受け入れに悩みもあった。「店側がしっかり考え方を伝えること」。専門家はトラブルを回避する基本をこう強調する。
男性は5月、遠方から訪れた両親をもてなすため、福岡市内の老舗水炊き店を予約しようと電話した。子ども連れと告げると「小学生以上は大丈夫ですが、未就学児は入店できません」と言われて諦めた。
店によると、過去に接待で利用した客が子ども連れ客にクレームを言うなどのトラブルが数件起きたのが、制限のきっかけだった。
店内には仕切りがあるだけで、声は周囲に届きやすい。「子ども連れのお客さまに不愉快な思いをさせると、それはそれで申し訳ない…」と担当者。「こういう対応、うちだけでしょうか。他店の対応も知りたいのですが」。店側からも取材依頼を受けた。
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同市博多区の水炊き店「新三浦」博多本店は個室が充実し、法事や祝い事といった家族利用が多く、年齢問わず入店できる。接待席の隣には、子ども連れ客を通さないようにし、子ども用の食器や椅子も用意する。投稿のあった店以外の7店は子ども連れ客を受け入れていた。九州内外で展開する「もつ鍋 おおやま」なども受け入れに積極的だ。
7店の一つ、福岡県内で複数のもつ鍋店を経営する会社は、店舗ごとで対応が違う。「大人の空間」をコンセプトにした店舗は高校生未満はお断り。観光客の多い地域の店舗は利用できる。以前はそこも「子ども不可」だったが、「お断りするのが悲しい」と従業員が申し出て、今では家族客でにぎわっている。
「騒ぐ子どもを注意しない保護者もいて、困っている」と明かす店もある。「あらゆる客層を十分に満足させるのは簡単ではない。入店拒否の判断は理解できる」と付け加えた。
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「店側がコミュニケーションを取り、ギャップを埋めていくことが重要だ」。飲食店事情に詳しいグルメジャーナリスト、東龍(とうりゅう)さんはこう指摘する。
雰囲気づくりや客単価を理由に子ども連れ客を断るのは店の判断であり、正解はない。ただ、予約や確認なしの利用が多い日本では、入店後に店側のスタンスが分かる例も少なくない。
中には時間帯や曜日、個室などに限定して子ども連れ客を受け入れるようにし、好評を得ている高級レストランも増えているという。東龍さんは「注文数や滞在時間などの条件を満たせば子どもも可といったルールを、店頭やホームページで明示することが有効」と語った。
最終更新日:6/16(金)14:10 西日本新聞