ソロキャンプが人気を集めたが、最近はそれをグループで行う「ソログルキャン」を楽しむ人がいるらしい。一見矛盾するがどう過ごしているのか。現場をのぞいた。
4月下旬の土曜昼、神奈川県愛川町の中津川河川敷を訪れた。家族連れや友人同士ら多くのキャンパーに交じって、距離を取りながら1人用テントが並ぶ一角が気になった。せっせとテントを張る人、設営を終えてのんびりする人――。知り合いのようだが、声をかけるわけでも手伝うわけでもない。
彼らは、ソロキャンプの普及を目指す「日本単独野営協会」のメンバーだ。会の代表で横浜市の会社員、小山仁さん(46)は、椅子でくつろぎながら、「助けを求められれば手伝うけど、基本的には干渉しない。そんな距離感」と説明した。
その後も、たき火で食事を作ったり、テントで眠ったり。それぞれが自由に過ごす。かと思えば、ある人が新しく買ったテントをみんなで見学する場面もあった。
小山さんは、「初めからグループで役割を決めると、自分の好きにできないことがある。1人だとキャンプ道具の話などを気が向いた時にできない。それぞれの短所を補う要素がソログルキャンにはある」と話す。
アウトドアスタイル雑誌「ゴーアウト」のプロデューサー竹下充さん(44)は、「自分もキャンプは基本的にソログルキャン。仲がよくても同じ所で寝るのは気を使う。でも完全に1人ではあまり楽しいと思えない」と話す。初心者がソロキャンプを始める際、設営や火おこし、食事作りなどに一通り1人で挑戦したいものの、分からない時は周りの人に教えてもらえるという安心感がある。
博報堂生活総合研究所上席研究員の伊藤耕太さんによると、ソログルキャンという言葉がSNSに登場したのは2021年頃から。コロナ禍で人と人との間に距離を取ることが求められ、1人で様々な活動をすることへのハードルが下がり、ソロキャンプが人気を集めた。そのまま1人でいることを楽しむ人たちが集まり、ソログルキャンが広がっているとみられる。
同研究所が首都圏と阪神圏で実施している調査「生活定点」で、「人づきあいは面倒くさい」と考える人の割合は1998年の約23%から、2022年には約34%に増えた。年代別では30代が全体より約5ポイント高かった。職場や地域で人間関係が増え、反動で「つきあいは面倒だ」と思うようだ。
伊藤さんは「血縁や地縁といった人間関係は弱くなる一方、SNSの登場で必要な時だけつながる関係に慣れてきた。深くつきあうことで生じる面倒くささに敏感になっており、ソログルキャンにも反映されている。こうした関係は広がっていくのではないか」としている。
最終更新日:6/9(金)11:07 大手小町(読売新聞)