ユニクロは値下げ?税込義務化

3月31日に消費税転嫁対策特別措置法が失効し、4月1日より税込み価格表示が義務化される。今まで本体価格+税の値札を付けていた企業は「税込み価格を上からシールで貼るか追加の値札を添付する」「POP (店頭広告)やタブレット、デジタルサイネージ(電子広告)などを使って税込み価格を表示する」「商品の陳列棚に税込み価格を表示」「税別価格と税込み価格の読み替え表の掲示、配布」などの対応を行えば、値札の付け替え作業をしなくても良い。



 ネット販売やテレビ、カタログ通販などの非接触型の小売りも、購入決定時の媒体が税込み表示となっていれば、本体価格+税の値札の付け替えは必要ない。こうした特例事項を設けることによって小売店の現場の混乱を来たす事なく移行できるよう、一定の配慮が施される。

 この税込み価格表示義務化について、特に商品の安さを武器に戦う企業にとっては重要な意味合いを持つ。対応として次の2つのケースで分かれることになる。それは、本体価格+税表記で訴求している企業と、すでに税込み表記で訴求している企業だ。

 代表的な例を挙げるならば前者がユニクロで後者がワークマンといったところだろうか。

最近は生活者の潜在的な意識が購買決定を大きく左右する。特に衣料品は買い慣れた手順で購入する人が多い。以前買って気に入った店からのぞいたり、日用品の買い物ついでだったり、個人がそれぞれ納得のいく方法で商品を手にしている。常日ごろ「A店は安い」と思って買っていたのに、高く感じてしまうきっかけを与えてしまうと、A店で買う以外の選択肢を探すことになるのだ。

 人気ショップとして継続して支持を集めるためには、いつもの買う習慣以外の選択肢をいかに与えず、顧客をつなぎとめておけるかが重要だ。

 そのあたりのことを良く理解しているのがユニクロだ。現在、ユニクロの店内をのぞくと値下げ商品は1枚もない。冬物セール時期にもかかわらず値下げ表記が無いのだ。あるのは「新価格」と書かれた赤いPOP表記のみ。そう、ユニクロでは値下げ価格を「新価格」とうたうのだ。「値下げ」「処分価格」「割引」と聞いてワクワクしたのは遠い昔の話で、今では「余り物」とか「売れ残り」といった負のイメージの方が強くなる。

 確かに「新価格」であれば、「新商品」や「新作」と同じように「新」で始めた方がブランドイメージが保たれる。しかし、それでは生活者の誤認とならないのか。個人的には少し不安に感じるのだが、そこまでこだわって価格訴求を考えているという事の裏返しでもある。

 4月から始まる「総額表示」の義務化。今までお値打ち感を打ち出していた企業の大半は本体価格+消費税で価格訴求をしてきた。競合店の動きを見ながら消費税を内包させる(実質値下げ)企業が多いと考える。しかし、これは新たに消費税を転嫁する話ではなく、表現方法が変わるというだけの話なのだが、「値上げ感」=負のイメージという呪縛から、ファッション産業は逃れられないでいる。

磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)

最終更新日:1/20(水)9:54 ITmedia ビジネスオンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6382721

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