先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の開幕を19日に控え、首脳や配偶者の訪問が見込まれる宮島(広島県廿日市市)や平和記念公園(広島市中区)への立ち入りが18日正午から制限された。宮島では、20日午後2時まで識別証を持つ島民らに出入りを限定。島内の宿泊施設は、予約客へのキャンセル対応に追われるなど混乱もみられた。18日は各国首脳が相次いで広島入りする予定で、本番を目前に控え、警戒が強まっている。
入島制限を翌日に控えた17日午後、土産物店が立ち並ぶ宮島の参道は、すでにシャッターを下ろした店が散見された。土産物店を営む男性は「明日から営業はできない。仕入れを調整する必要もあり、前倒しで休んだ店が多いのでは」と話す。島内には外国人観光客や修学旅行生の姿もあったが、いたるところで制服姿の警察官が巡回。すでに厳戒態勢に入っていることがうかがえた。
宮島では各国首脳の配偶者が参加する「パートナーズ・プログラム」の舞台となるほか、首脳の訪問も見込まれている。島民らには識別証が発行され、20日午後2時まで島民以外の出入りは厳しく制限される。官民の支援組織「広島サミット県民会議」は3月にこうした入島制限の方針を示し、宿泊施設や飲食店、土産物店などに期間中の休業を要請してきた。
これを受け島内のホテルや旅館は、すでに入っていた予約をキャンセルする作業に追われることに。ある旅館の担当者は「サミットの意義は大きい。できる限りの協力はしたい」と話す一方、外国人観光客への対応に苦慮したと明かす。
日本国内からの予約客には一人一人に電話で事情を説明したが、外国人にはなかなか連絡がつかず、数組と連絡が取れないまま開幕が迫る事態になった。他の宿泊施設も同様の問題を抱えていたことから、県民会議は4月末、一転して連絡が取れないまま島へと渡るフェリーが発着する宮島口を訪れた客には、「一時識別証」を発行して入島を認める方針を示した。
「宿泊を受け入れられると誤解されるし、疑問符がつく対策だ」と本音を口にするのは別の旅館の関係者。この旅館も海外予約客1組と直前までキャンセルを巡ったやり取りが続いたといい、「スタッフも必要最小限しかいないし、仮に来島されても対応できない」とこぼす。
期間中は世界遺産・厳島神社への参拝はできず、宮島水族館など他の観光施設もすでに休業を決定。飲食店や土産物店も大半が要請に応じるとみられ、厳重な警備も敷かれることから、島に入ったとしてもほとんど観光はできないのが実情だ。
一時識別証の発行について県民会議の担当者は「あくまで最終手段」と強調。廿日市市は、連絡がつかなかった観光客が訪れた場合に備え、期間中は宮島口に職員を配置。市が確保している宮島口の宿泊施設に自費で泊まれることを案内し、入島制限に理解を求める方針だ。(桑村大)
最終更新日:5/18(木)15:13 産経新聞