旭化成が10日発表した2023年3月期決算は、純損益が過去最大の913億円の赤字となった。同社の最終赤字は1949年の上場以来2度目で、2003年3月期以来20年ぶり。米国の子会社が手がける電池材料のセパレーター(絶縁材)事業を見直した結果、1863億円の減損損失の計上を迫られた。
旭化成は15年、リチウムイオン電池などのセパレーターを製造する米ポリポア社を約2600億円で買収した。セパレーターには乾式と湿式があり、旭化成は湿式を手がけてきた。電気自動車(EV)の普及が進む中、乾式を製造するポリポア社の買収で商品の幅を広げ、車載用電池市場で競争力を高める狙いだった。しかし、乾式の引き合いが低迷するなど見込みが外れ、計画を大きく下回る状況が続いていた。
一方で湿式はEV向けの需要拡大が見込めるため、減損処理にあわせてセパレーター事業のあり方を見直す。今後は湿式関連の投資を強化し、乾式の事業は分離して改善策を検討する。
最終更新日:5/10(水)19:36 朝日新聞デジタル