テレワーク推進 医療者の願い

首都圏を中心に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の新規陽性者数が急増していることから、2021年1月8日に東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に緊急事態宣言が発出されました。また、1月14日からは、対象が11都府県に拡大されました。政府は宣言の発出に伴い、テレワーク、ローテーション勤務や時差通勤などによって、出勤する職員を7割削減するよう事業者に。また、人口あたりの感染者数が最も多いでは、1月8日から2月7日までを「テレワーク緊急強化月間」に定め、「週3日・社員の6割以上」のテレワークを実施することや、出勤を要する職員に対してローテーション勤務や時差出勤等を推進することで、「出勤者数の7割削減」を目指すことを企業に要請しています。リスクの高い接触機会を減らすことにつながるテレワーク。あらためてそのメリットについて考えたいと思います。東京都の最新のモニタリング会議資料によると、新規陽性者の感染経路として最も多いのは同居者からの家庭内感染です。ただ、家庭内感染というのは、職場、施設、会食、接待を伴う飲食などの「家庭の外」で起きた感染が、家庭に持ち込まれた結果であると捉えられています。実際に就労世代(20代から50代)では、職場内感染が占める割合が高い傾向にあります。では、職場ではどのようにして感染が起きているのでしょうか。これまでの職場内クラスターの分析や知られている感染経路を考えると、職場内感染は次の3つの形で起きていると考えられます。仕事がひと段落したあとに居場所が切り替わる場面での感染です。たとえば、業務を行うデスクから、休憩室や更衣室、喫煙所などに移動したあと、つい油断してマスクを外して会話をするような場面です。職員食堂や近くの飲食店、または移動する車の中などで同僚と昼食をとる場面にも同様のリスクがあります。職場内クラスターの解析では、電話やインカムなどのモノの共有、あるいはトイレなどの共用設備の環境表面に触れることで感染が拡大した可能性が。このようなモノや環境表面を介した接触感染は、①に比べると起こる頻度は低いと考えられますが、感染性の高い時期の陽性者が触れた物品や環境表面に不特定多数が頻繁に触れる状況があれば、感染のリスクが生じます。不織布や厚めの布製マスクをしていると口や鼻から出ていく飛沫をある程度減らすことができます。そうはいっても、換気の悪い空間で、複数人が集まって、長い時間話し続けるような場面(会議など)では、ウイルスを含む微細な粒子が空気中に滞留しやすく、感染するリスクが高まると考えられます。これらの①から③の状況というのは、いずれも感染者がいることが事前に分かっていれば、休ませるなどして避けることが可能です。しかし、新型コロナは症状が出現する前から感染性を発揮し、症状出現直後は症状が軽微な場合も珍しくありません。そのため、職場には感染していることを知らずに働いている人がいるという前提で予防策を講じる必要があります。職場は滞在時間が長い場所ですので、感染者がいた場合に、接触する機会がどうしても増えます。テレワークの目的は、このような接触機会を減らすことにあります。どうしても出勤せねばならない業種については、ローテーション勤務や時差通勤を導入することも推奨されています。ちなみに、通勤電車やバスなどの公共交通機関で感染する可能性は、次のような理由で低いと。・ 電車やバスに滞在する時間は、職場や会食で過ごす時間に比べて通常は短い・ 電車やバス内では発声がほとんどない・ 電車やバスは密閉空間ではなく、換気システムが稼働している例えば、鉄道総合技術研究所のシミュレーションによれば、通勤電車が窓を10ほど開けて走行する場合、車両内の空気は数分間に1回入れ替わり、換気量は乗車率によってほとんど。路線バスについても、国土交通省は数分間で空気が入れ替わるとしています。車内の環境を介した接触感染が気になるという方は、乗車中に顔に触れないことや、下車後や出社・帰宅時に石鹸と流水で手を洗うか、手洗い設備がなければアルコール製剤で手指の消毒を行うとよいでしょう。この記事を執筆している1月17日現在、首都圏に限らず、全国のほとんどの都道府県で新規陽性者数が増える傾向にあります。現在のペースで陽性者数が増えることの最大の問題点は、最終的に新型コロナで死に至る方の数が加速度的に増えるということです。もう一つの問題点は、新型コロナの重症者が増えることによって普段からあまり余裕のない医療提供体制が逼迫し、特に冬に起こりやすい心筋梗塞や脳卒中といった重い病気の方の入院も難しくなることです。これは、これまで当たり前に受けられていた医療が受けられなくなるということです。すでに各地でそのような状況が起きています。欧米と比べて感染者数が少ないのに医療が逼迫するのは民間病院が新型コロナを受け入れていないからだ、といった言説がこのところ聞かれるようになりましたが、この点については本論から外れますので、をご参照ください。人と人との接触機会を減らすテレワークは、新型コロナによる死亡者数を減らすことに加え、医療提供体制を維持することで、それ以外の病気による重症化や死亡をも防ぐことにつながります。やはテレワークに向けた助言や支援を提供しています。これらを活用しながらテレワークの推進に多くの企業のご協力が得られることを一医療者として願っています。※この記事は2021年1月17日現在の情報に基づいて執筆しています。【この記事はYahoo!ニュースとの共同連携企画記事です。】

最終更新日:1/18(月) 7:00 坂本史衣

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6382541

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