躍進を続ける大手総合商社の伊藤忠商事は、経営の底上げを図るために首脳陣の大胆な交代に打って出た。
同社は1月13日、4月1日付で石井敬太専務執行役員(60)が社長COO(最高執行責任者)に昇格すると発表した。鈴木善久社長COO(65)は代表権のない副会長に就く。2018年4月に社長COOに就任した鈴木氏は、在任わずか3年で社長を退くことになる。
1月13日に行われたオンライン会見において、石井氏は2020年末に岡藤正広会長CEO(最高経営責任者、71)から新社長就任の打診を受けたことを明らかにした。石井氏は「(化学品部門という)地味な業界にいたので、社長就任は1ミリも考えていなかった。今までも私の名前が(報道などで社長候補として)挙がったこともない」と、自身にとってもサプライズであったことを率直に語った。
岡藤氏は2010年4月の社長就任以来、伊藤忠を牽引している。この間に、伊藤忠の業績は大幅に伸びた。2010年3月期(アメリカ会計基準)の純利益は1281億円だったが、10年経った2020年3月期(IFRS)には純利益5013億円を稼ぐまでになった。「伊藤忠を躍進させたカリスマ」(商社業界関係者)の下、同社の時価総額は2020年6月に三菱商事を抜いて商社業界トップに立った。
現在の伊藤忠は各部門がバランスよく稼いでおり、突出して稼ぐ部門がないことが特徴だ。資源事業への依存度も低く、非資源事業が純利益の約8割を占める。岡藤氏は伊藤忠グループ各社の経営管理を徹底することで、利益を積み上げてきた。
とくに生活消費分野の核となるファミリーマート関連事業を一手に担う。この第8カンパニーのトップには、岡藤氏の「懐刀」と言われる細見研介執行役員が就いていた。
ファミマは伊藤忠の今後の成長エンジンと期待されるが、多くの課題を抱えている。例えば海外展開が遅々として進んでいない。中国では現地のパートナー企業が継続的な利益相反取引などを行っていたとして訴訟を継続しており、出口はまだ見えていない。国内でも、弁当などの商品開発力はコンビニ王者のセブン-イレブンに比べると見劣りする。
最終更新日:1/18(月)11:47 東洋経済オンライン