10万円の再給付 あり得るか

1都3県を中心に新型コロナウイルスが感染拡大する中、2度目の緊急事態宣言が発出された。経済へのダメージは大きくなり続ける。感染対策と社会経済を両立する上で、どのような対策が必要なのか。再びの定額給付金の給付は必要なのか。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会、基本的対処方針等諮問委員会のメンバーで、行動経済学が専門の大阪大学教授・大竹文雄さんに話を聞いた。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】

同時に営業の自由の権利をどう捉えるかという観点もあり、慎重な検討が必要です。

自分の利益だけを考えていると、感染を拡大させてしまうという経済学でいう負の外部性が発生しています。この場合、営業の自由を優先すれば、休業してもらうために休業手当を支払うべきということになります。

一方、感染拡大という負の外部性を伴う行為をすることはそもそも営業の自由に含まれないということであれば、休業しないことに対する罰則で対応すべきということになります。

もう一つ厄介なのは、このような負の外部性が最初から想定されていたかどうか、ということもあります。感染が拡大すると休業を求められることがあることを政府も飲食店側も想定していたか、という点。予見可能であったかどうかということです。

理想的な形を目指すのであれば、1店舗1日あたりいくらとするのではなく、その店が被る損失に応じて支援額も変動すべきです。

ーー東京大学の研究では、緊急事態宣言よりも日々の感染者数などの「感染情報」が人々の行動変容へ最も効果を発揮したというデータが示されています。しかし、状況が変わる中で今回も同様に「感染情報」が効果を発揮するのでしょうか?

現在は昨年春よりも一人ひとりの感染する確率は高い状況です。しかし、20代から50代で持病もない場合、多くの人は重症化しないというリスクの認識が進みました。日々の感染者数が1000人を超えた、2000人を超えたといっても東京全体の人口を考えれば「大したことはない」と考えることもある意味自然です。

そのような中では、なかなか行動変容は起きません。

私が取り組んだ研究でも、あなた自身に被害が及びますと伝えるよりも、あなたの周囲の人に被害が及ぶと伝える方が、より多くの人の行動変容につながるということがわかっています。

あなたの周りの高齢者の健康が損なわれるかもしれない、あるいは医療が崩壊することで新型コロナ以外の疾患や怪我であっても亡くなる人が増えるかもしれない。

このようなメッセージは自分のことしか考えていないような人に対しても、一定の効果がある。

東京などでは少しずつ通常の医療が受けられなくなってきています。こうした医療崩壊の深刻さが伝わることで、徐々に効果が現れることを期待しています。

ーー分科会はより効果的なメッセージの発信を政府に求めていますね。

専門家会議は状況の緊急性を踏まえ、市民に直接メッセージを呼びかけるという方法を選びました。しかし、その結果として政府に提言している立場の専門家が全てを決定しているという誤ったイメージも広がってしまいました。

そのような反省点を踏まえ、専門家分科会は政府に提言し、政府が市民へメッセージを伝えるという役割分担へと変わりました。しかし、政府は分科会の資料をそのまま使うことも多い。

どのようなメッセージであれば人々に伝わるのか、工夫が必要だと思います。

時期によっても、どのようなツールで発信するかによっても効果的なメッセージは変化します。本来は、政府も様々なテストを科学的に行い、その効果を検証しながら最も良いメッセージを出していくことが理想的ですね。

メッセージをどうすれば効果的に伝えられるのか…非常に難しい課題だと思います。切羽詰まった状況になる中で、最近は尾身先生が再びメッセージを発信するようになりました。

本来の役割分担を踏まえれば、もう少し政府に効果的な発信を期待したい。行動経済学が貢献できる部分もあると思いますが、今はそこの役割が宙ぶらりんな状態です。

最終更新日:1/15(金)22:16 BuzzFeed Japan

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6382350

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