入学式前夜に納品 制服業界の現状

「もうすぐ入学式なのに届かない」――。全国的に学生服の納品が遅れ、7日に県立高校の入学式が迫った香川でも、生徒の手元に届かない事例が相次いでいる。昨春、東京都内で入学式に間に合わないトラブルが起き、問題となった。高松市の業者は式の前日に約100人分を車で倉庫まで受け取りに行って間に合わせる計画。「なぜ昨年と同じことが繰り返されるのか」と疑問を投げかける。



 ◇「昨年よりも状況ひどくなった」

 3日午前、高松市内の制服卸売会社。香川菅公学生服の松野安伸社長(69)は書類にある「○○高校、ブレザー、45」「△△高校、セーラー、55」などの注文数に目を光らせていた。大手メーカーから仕入れた制服を小売店に卸したり、直接販売したりしているが、ブレザーやスラックスなど約120人分の制服がまだ届いていないという。松野社長は「昨年よりも状況はひどくなった」と声を落とした。

 納品遅れの背景には、円安での国内生産への切り替えによる縫製作業の逼迫(ひっぱく)や、コロナ禍で外国人技能実習生が減ったことによる人手不足がある。加えて、学校が制服や標準服を「学ラン・セーラー服」から、性別に関係なくスラックスなどを選びやすいブレザーやスーツタイプに変更する動きが加速していることなどが挙げられる。

 松野社長によると、生地メーカーからは「(デザインの多様化により)生地の柄や種類が増えて生産が追いつかない」、縫製を担うメーカーからは「工場でブレザー向けの生産ラインを拡大するのが間に合わない」――などの声が聞こえてくるという。

 ◇レンタカーや裾直し、業者負担で

 香川菅公では未納品のうち約100人分の制服が工場で完成し、岡山県内の倉庫に届くのが入学式前日の6日にまでずれ込んでいる。当日は香川まで車で運び、裾直しが必要な商品は外注で即仕上げてもらい、社員やアルバイト計約10人が車5台を借りて、6日夜までに県内の各家庭に送り届けるという綱渡りのスケジュールだ。レンタカーや裾直しの追加料金は自社負担となる。

 22年も、松野社長自らが鳥取県米子市の工場までの往復400キロをトラックで取りに行き、入学式の前日に届けた。制服業界の現状について、「生産能力の限界を超えたメーカーが、小規模学校の受注を後から断ったという話も耳にした。根底には、時代の変化に対応できない業界の構造的な問題もある。納品遅れや値段高騰のしわ寄せは、弱い立場の保護者や子どもが被ってしまう」と懸念する。【西本紗保美】

最終更新日:4/5(水)18:32 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6459255

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