日立製作所は、2024年度採用計画で「ガクチカ(学生時代頑張ったこと)」に関する質問を廃止する。ガクチカに関する質問をエントリー、面接全ての時点で廃止し、応募者の志望職種やキャリア志向を見定める「プレゼン選考」を新たに導入する。
なぜ、定番のガクチカを廃止するのか。同社の進藤武揚氏(人財統括本部 タレントアクイジション部長)によると、2つの理由があるようだ。
ガクチカに代わって、新たに導入するプレゼン選考は、最終面接時の5分間で行う。応募者は「入社後、どんな職種で、どのように社会課題の解決に取り組みたいか、それはなぜか」というテーマでプレゼンを実施。フォーマットに指定はなく、PowerPointや動画を使用しても、トークのみでも良い。
プレゼン選考では「Will」(応募者の将来志向やキャリア観)、「Can」(強み・行動特性)、「Must」(希望職種とのマッチング)に基づいて、自身のキャリア志向や日立で成し遂げたいことを語ってもらう。面接では、論理的思考力やプレゼン能力、課題発見力、解決構想力を総合的に評価するという。
「前年の採用活動で試験的にプレゼン選考を実施したのですが、応募者の日立への入社希望度なども伝わってきます。ジョブ型推進にあたって『自立してPRできる人材』が欲しいと考えています。プレゼン選考では『私が~~をしたい』と一人称で語れるか、自立的、主体的に考えることができる人材かどうかが分かります」(進藤部長)
3月10日開催の説明会では、実際に23年卒の内定者がデモンストレーションを実施した。テーマは「解決したい社会問題は何か」「日立のリソースを使ってどういう風に解決したいか」。
内定者は「モビリティ×女性の社会参画」をテーマにプレゼンを実施。「安心・安全移動手段がないために、雇用、教育の機会を失われている女性たち」を解決したい社会課題とし、(1)問題の現状、(2)問題から考えられる課題、(3)課題に対して日立のソリューションをどう用いるか、(4)志望職種でどのようにソリューションに関わっていくのか、(5)課題を解決して生み出すことができる価値――というアウトラインで、入社後に成し遂げたいことを語った。
プレゼン終了後、「なぜその職種を志望したのか」「今後のキャリアの希望も踏まえて、志望職種でどのように取り組んでいくか」など、内容に関わる質疑応答も実施した。
プレゼン選考のテーマは事前に告知する。実際にプレゼン選考を受けた応募者によると、準備には「3~4日」要したという。
プレゼン選考を受けてみて「ガクチカだけでは伝えられない『できること』『価値観』を伝えられた」と振り返る。
「個人的な意見ですが、ガクチカを含めた過去のことになると、どうしても『良く見せないと』『成果を定量化しなければ』などと考えてしまっていて……。プレゼン選考の内容は未来のことなので、うそをつくことなく、声を大きく話せました。ガクチカだけでは、なぜ自分がこういった考えを持ったのかという価値観の部分や、学生より前の経験を含むことができなかったと思っています。そういった部分を含めて、自信を持って話すことができ、今後のモチベーションにもつながったと感じています」(内定者)
一方、慣れないことで不安もあったという。
「最初は、テンプレートがないため何も分からない中、学生としての立場から無鉄砲なことを言ってしまうのではないかという不安もありました。しかし、プレゼンテーション終了後にフィードバックがもらえたり、『本当に実現できるのか』『こういったアプローチも可能だよ』とアドバイスをいただけため、臆することなく話すことが重要なのだと感じています」
同社は24年度の採用計画で、新卒650人(大専卒:600人、高校卒50人)、経験者600人、計1250人を予定している。
ガクチカの廃止の他にも、若年層のキャリア観を醸成する「青田創り」施策、博士課程学生の獲得増に向け、有給・長期のインターンの拡充などに取り組む。「人を重要な資本と位置付け、ジョブ型人材マネジメントへの転換に合わせて、その最上流である採用が変わっていかなくてはいけない」(進藤部長)
最終更新日:3/10(金)18:42 ITmedia ビジネスオンライン