競合とタッグ 東急不動産とJR東

「まさか、JR東日本とタッグを組むとは」。ある大手デベロッパーのベテラン社員は、東急不動産の選択に驚きを隠さない。



 東急不動産ホールディングス(HD)は2023年2月14日、東日本旅客鉄道(JR東日本)と包括的業務提携を結ぶと発表した。提携期間は2023年度から2033年度までの10年間。両社は今後5年間で、提携効果により1000億円程度の売り上げを創出する計画だ。

 同日行われた会見の席上、東急不動産HDの西川弘典社長は「2022年秋ごろから話し合う機会があり、お互いの目指すビジョンと、リソースの補完性の高さを感じた。非常に高いシナジーとさらなる事業成長が期待できる」と語った。

東急不動産HDが東急のライバルであるJR東日本とタッグを結成した背景には、両社が抱える経営課題と危機感がある。

 JR東日本の深澤祐二社長は、「コロナ禍で2年間にわたり当社は赤字だった。変革のスピードを上げるとともに、事業をレベルアップしなければならないという危機感を持っているが、自社のノウハウだけでは限界がある」と話す。

 コロナ禍で鉄道の旅客需要が縮小する中、JR東日本は苦戦を強いられている。2022年3月期の営業損失は1539億円(2021年3月期は5203億円の営業損失)だった。

両社はさらに、東急不動産HDが保有する再エネ発電施設を投資対象とした100億円規模のファンドも共同設立し、今後10年間で投資規模を約1000億円にまで拡大する構えだ。

 東急不動産HDの強みの2つ目が、リゾート事業だ。東急不動産HDはホテル66施設(9173室)を運営するほか、19つのゴルフ場と7つのスキー場を抱えている。こうした施設と連携することで、JR東日本は鉄道輸送需要の拡大が狙える。今後は、東急不動産HDグループの運営するホテル会員向けに新幹線往復チケットがついた商品を開発するなど、連携を深めていく算段だ。

足元では、「渋谷駅桜丘口地区」での大規模再開発や「神宮前6丁目地区再開発」(いずれも東京都渋谷区)などの開発プロジェクトが進行中であり、東急不動産HDとしてもコストと手間を抑えながら、新しく再エネ発電施設などを展開し収益を積み上げたい。そうした点から、JR東日本との提携はメリットが大きいというわけだ。

 「日本の国際競争力を高めるためには地方創生が不可欠だ。協業を通じてお互いの資産を活用し、再生エネルギーによる産業創出と、リゾートによる観光立国の実現を目指す」と、東急不動産HDの西川弘典社長も強調する。

最終更新日:3/2(木)8:48 東洋経済オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6455614

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