トラック事故死 業界の問題と対策

運送業界、特にトラックの安全性の改善は急務であり、全日本トラック協会も「安全は最重要課題」であると、その重要性を説いている。



 筆者(山下駿、自動車ライター)は10年以上にわたって自動車業界で働いており、現在では、総括安全衛生管理者として社員への交通危険予知、事故事例にもとづく事故予防手段の指導をしている。それらの経験と知識をもとに、現在トラック運送業界が抱えている問題やその対策案について考えてみたい。

 近年、コロナ禍の影響もあり、宅配の需要による物流の活性化は加速度的に進んだ。

 国内の物流事業の市場規模は約29兆円。その中でトラック運送事業の営業収入は2018年時点で19兆円と、全体の6割を超えている。まさに、トラックが国内の物流を支えていると言っても過言ではない。

 しかしそんな現状とは裏腹に、現在、トラック運送業界は多くの問題に直面している。

・重大事故が多い
・ドライバーの人員不足
・過酷な労働環境
・ガソリン価格の高騰
・競合他社の増加による利益率の低迷

などである。筆者は、これらの中でも「重大事故が多いこと」が、トラック運送業界が抱えている最も大きな問題と考えている。

人間である以上、「安全運転をしよう」といった意識だけに頼った対策では不十分であるというデータは、過去に国土交通省が出している事故の推移から分かる。それでは、今後は一体どのようにして運送業界から事故をなくせばいいのだろうか。筆者は、人に足りないものを最新の技術で補う姿勢が重要だと考える。

 運送システムの改善として、米国は既に、世界に先駆けてトラックの自動運転技術の開発を進めている。実現すれば安全性と生産性を向上させ、運転手にかかる心身への負担を軽減できるだろう。人工知能(AI)の活用方法は自動運転だけではないので、他にも紹介しておこう。

・入出荷作業の自動化
・棚卸し作業などの無人化
・在庫の需要予測
・危険運転予測・予知
・配送ルート最適化

 これらの場面では既にAIが活躍しており、人的負担の低減や業務の効率化に一役買っている。こうした最新技術、AIなどの利用は、労働環境の改善によるドライバーへの負担軽減を見込むことができるだろう。

 もちろん、導入に際してコスト面やAIへの理解が行き届かず、ためらってしまい、浸透しにくい現状もある。しかし、安全性を最重要課題とするのであれば、導入コストよりもリターンの方が大きいのではないだろうか。

 例えば、効率化による労働時間の短縮は、無理のある業務環境よりも、ドライバーの心身への負担をずっと減らせるだろう。これにより運転中の急な体調不良を減らすことも期待できる。他には、トラック用の「巻き込み事故防止AIカメラシステム」というものも存在する。車載カメラから得た映像をAIアルゴリズムで解析し、危険を予知するとドライバーに警報などで伝えるというものだ。

最終更新日:2/23(木)17:26 Merkmal

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6454875

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