パート女性 届かぬ休業支援

新型コロナウイルスの感染拡大は、特に非正規で働く女性に大きな打撃となっている。もともと雇用が不安定であるうえ、外出自粛による営業不振にさらされる飲食・サービス業などを担う人が多いためだ。野村総合研究所の調査によると、休業中のパートやアルバイト女性の7割が休業手当を受け取っていない。支援を必要とする人に支援が届かない問題がある。【毎日新聞経済プレミア・渡辺精一】



 ◇半数近く「生計支える」

 野村総研は2020年10月、新型コロナによる雇用調整で休業中の2163人に休業実態を調査した。休業中のパート・アルバイトの女性(計618人)では休業手当を受け取っていない人が70%を占め、正社員女性の37%を大きく上回る。

 休業手当を受け取っていないのは、業種別でみると、製造業が43%なのに対し、卸売・小売業78%、宿泊業・飲食業66%などが高い。世帯年収が低いほど受け取っていない割合が高い傾向にあり、200万円未満の人では78%にのぼる。

 調査に回答したパート・アルバイト女性は40%が単身、4%が母子家庭で、半数近くが自ら生計を支える人たちだ。休業手当がない人は休業への不安について、51%が「仕事がなくなる」、27%が「心身の健康維持が難しい」を挙げる(複数回答可)。

 調査を担当した野村総研の上級コンサルタント、武田佳奈さんは「本来権利がある休業手当を受け取れず、支援から漏れ落ち、不安と生活困窮に直面している人は少なくない」と訴える。

 ◇自ら申請できる「休業支援金」

 労働基準法は、企業側の事情で休業する場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことを義務付ける。労働者の「最低限の生活」を保障する目的だ。すべての労働者が対象で、もちろん非正規やパート、アルバイトで働く人も含まれる。

 企業が休業手当を支払う場合、手当の原資として、国が企業に雇用調整助成金を出す制度がある。コロナ対策では、特例措置として、助成割合を最大で手当全額とし、額の上限は1人1日1万5000円に引き上げた。企業の負担軽減のため申請要件も緩和した。

 雇用調整助成金は雇用保険の制度であるため、パートやアルバイトで雇用保険に加入していない人は本来対象外だが、特例では、雇用保険に加入していない人の休業手当も対象とした。特例は21年2月末まで延長している。

 だが、申請書類が作成できなかったり、資金不足であったりすることを理由に、休業手当を支払わない企業もある。

 そこで、国は、新型コロナ対応の休業支援金・給付金を新設した。休業手当を受け取れなかった中小企業で働く人を対象に休業前の平均賃金の8割(上限1日あたり1万1000円)を休んだ日数分支給する。パートやアルバイトの人も対象だ。本人が郵送やオンラインで申請できる。

 ◇判断しにくい「シフト制」

 制度としては、休業手当や支援金・給付金は受け取れる状況にある。だが、なぜ、それが必要な人に届かないのか。

 野村総研の武田さんは、要因として二つを挙げる。

 第一に、休業手当などの制度について、企業や働く人がよく理解していない現状があることだ。

 自治体は、生活に困窮した人の支援や、生活保護のための窓口を用意している。だが、コロナ禍までは収入があり生計が成り立っていた人には、縁遠かった存在であり、なかなか気づきにくい。

 第二には、休業が「企業側の事情」であるという判断の線引きだ。パートやアルバイトの人は、企業や自分の都合に応じて働く曜日や時間を調整する「シフト制」勤務を取っていることも多い。シフトが大きく減った場合、企業側の事情なのか、自ら減らしたのか判断しにくいケースもある。

 厚労省は20年10月、休業支援金・給付金のシフト制の取り扱いを明確化した。休業前6カ月以上にわたり月4日以上の勤務が確認でき、コロナの影響がなければ同じような勤務を続けていたと確認できる場合や、労働条件通知書で勤務日の記載がある場合は「休業」として扱う。

 休業中のパートやアルバイトの女性はぎりぎりの状況にある人も多い。野村総研は「支援制度の周知徹底や、生活困窮者のための専門窓口の設立や追加政策が必要だ」と話す。

最終更新日:1/10(日)13:54 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6381801

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