ブッフェ封印 戦い続くホテル

一向に収束する気配のない新型コロナウイルスの影響で、徹底した感染予防対策に神経をすり減らしているホテル業界。これまで宿泊客に好評だった館内施設やサービスも次々と利用中止やプラン変更を余儀なくされているが、苦肉の策が思わぬ人気になっているケースもある。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が、コロナ禍で知恵を絞るホテルの現場をレポートする。

昨年後半よりブッフェを再開しているホテルもあるが、マスク着用は当然としてビニール手袋やスニーズガードもデフォルトであるし、座席の間隔を空けるなどの対策をとる施設は多い。

 手先が乾燥しているとビニール手袋自体をピックアップするのも難儀で、思わず力が入り不必要な枚数までピックアップしてしまうことがある。昨年末に滞在したホテルでは、手をかざすと風力でビニール手袋が持ち上がりそのまま手が入れられる器具を見かけて驚いた。

 ブッフェといえばバンケット(宴会)でもお馴染みの提供方法だが、そもそも不特定多数の人々が集う宴会はコロナ禍で忌避される最たるもの。だが、多くのシティホテルにとってバンケットは重要な収益の柱でありコロナ禍で業績に大きな影響を与えたサービスのひとつだ。

 そのような苦境を乗り越えようと新たなチャレンジはここにもみられる。一例として「プリンスホテル」では立食ブッフェから着席スタイルへと変更して好評を博している。料理はスタッフがワゴンサービスで提供、オープンキッチンで仕上げたメニューをゲストの席まで提供して回る新しいスタイルだ。

 ゲストは席を立つことなく出来立てメニューを楽しめるし、何より料理前の行列が回避できるのは嬉しい限りだ。

 座席間隔を設けた大きなテ-ブルといった対策にも力を入れているが、そもそもブッフェは省人化の点でも秀逸とされてきた中、着席スタイルとあらばホテルやスタッフの負担は大きい。しかし、会食やパーティーが控えられる状況下、安全安心に新たなコミュニケーションを生み出す場を提供したいというホテルの熱い思いも伝わってくる試みだ。

事業者支援の目的でスタートし、現在中止されているGoToトラベルは、事業者、ゲスト双方に様々な損益をもたらしていたが、宿泊施設でみると現場への負担は計り知れない。

 たとえば、ホテルによっては“チェックイン時の行列問題”も深刻になっていた。キャンペーンにまつわる説明や手続きで、通常の倍以上の時間がかかるなど宿泊客へ負担を強いている状況を嘆く現場の声が多く聞かれた。

 そんな中、昨年取材で訪れた「オリエンタルホテル東京ベイ」(浦安市)で興味深い光景を見た。東京ディズニーランドのゲストが多く訪れるホテルということで、子連れファミリーも多いホテルであるが、ロビーに面して大きなプロジェクションマッピングが設置されている。前に立つと自分が映像に入っているような動きに子どもは大喜び。チェックインの待ち時間も苦にならない様子だ。

 チェックイン待ちも銀行でみるような押しボタン式を導入し、ボタンひとつにも丁寧な消毒を行う徹底ぶり。プロジェクションマッピングの前も密にならないよう管理するなどホテル現場の努力は続く。

 ディズニーランドの閉園後など特定の時間にチェックインが集中していたため、GoTo対策というよりも、以前からチェックイン待ち対策の努力を重ねてきたオリエンタルホテル東京ベイだが、結果としてGoToという大きな環境の変化によって功を奏していた。

最終更新日:1/10(日)14:46 NEWSポストセブン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6381788

その他の新着トピック