早稲田大(東京)の1年生がこの春、月謝1000円の塾を開く。家庭の困窮から塾に行けず、高校受験で不利になってしまう中学生を教員志望の学生らがサポートする。生徒の学力底上げはもちろん、新型コロナウイルスの拡大により、キャンパスで学ぶ機会を奪われた学生の交流の場にもしたいという。学生たちの思いは--。【真田祐里】
◇教育学部生が週2回、全教科を指導
中学生の学習指導をするのは早大サークル「Grow Seeds Waseda」。昨年11月に小学校教員を養成する教育学部「教育学科初等教育学専攻」の1年生25人で発足した。
計画では、同サークルの学生が今年4月から高校受験を控えた中学生に個別指導の形で英数国など全教科を教える。週2回平日午後4~8時、料金は月1000円を予定している。
学習指導に加えて、学生の特技を生かし「お菓子作り」「バスケットボール」など体験型学習もしたいという。
なぜ、大学生が中学生に受験指導なのか――。
◇子ども食堂で知った「自分たちは恵まれている」
サークル発起人の梅木星輝さん(19)は大学入学後、千葉の子ども食堂で学習支援のボランティア活動をしている。そこで知ったのは、生活困窮世帯を対象とした行政の学習支援の対象にならず、塾にも行けない子どもたちだった。
新型コロナの影響で経済的に困窮している家庭もあった。「自分たちは恵まれている」。梅木さんは思い知ったという。
「だから、子どもたちに学びの機会だけでなく、居場所も提供していきたい」
学びの機会が制限されている学生にとってもメリットはありそう。
◇オンライン授業で大学生の実感がわかない現実
サークル立ち上げメンバーの一人、中川颯馬さん(18)は「大学生になった感覚はいまだに薄い」という。入学式がないまま、昨年5月からオンライン授業が続き、9月から対面授業が始まったが、まだ月に3回程度しかない。小学校見学などの課外授業もなくなった。
大学に行かないので、定期券も購入していない。現在は大学のオンライン授業と塾講師のアルバイトに明け暮れている。
中川さんは「新歓(新入生歓迎のイベント)があれば、違うサークルに入っていたかもしれない。大学生だからこそできる経験をしたかった」と参加した理由を話す。
野口爽裕さん(19)は「感染対策で、対面授業は同じ専攻で同学年の学生を対象とした授業のみ。先輩や他学部の人との交流もなくなってしまった」と話す。ゆくゆくは他学部や他学年からもメンバーを集め、交流の場になることを期待しているという。
田貝えりかさん(19)は教員になるための現場体験の機会にしたいという。
「メンバーは塾講師や家庭教師をしている子が多い。教員を目指す学生もいるので、自分たちの実践の場にもなれば」
教室は、大学近くのフリースペースを借りる予定だ。近隣の新宿区立中学にもポスター掲示への協力を頼んでいるという。
◇資金集めの目標は教材費など50万円
サークルでは、教室の運営資金として50万円を目標にクラウドファンディングの募集を近く始める。集まった資金は参考書や問題集の購入、広告費、大学生の会場までの交通費などにあてたいという。
サークルの問い合わせは以下の通り。
▽メール=growseedswaseda@gmail.com
▽ツイッターのアカウント=@GrowSeedsWaseda
▽インスタグラムのアカウント=growseedswaseda
最終更新日:1/9(土)16:58 毎日新聞