アマゾンや楽天といった大手通販サイト、さらには「ヌードルツアーズ」「ラーメンJourney」などの特化型がしのぎを削るなか、グルメイノベーションが運営するラーメン通販サイト「宅麺.com」が急成長している。会員数はコロナ前の13万人から43万人(22年12月)へと3倍以上増加。パートナー店舗も257店まで拡大している。
しかし、成功の理由はコロナ特需に乗っただけではない。2022年12月に行われた同社主催の「第12回 お取り寄せラーメン オブ・ザ・イヤー/JAPAN BEST RAMEN AWARDS 2022」授賞式には、メディアの前にめったに姿を見せないラーメン界の重鎮や有名店の店主らが顔をそろえた。
グルメイノベーション社長の井上琢磨氏は「2010年の創業時は本当に大変でした。『ラーメンを通販しませんか?』って声をかけても、怪しまれてしまって(笑)。ラーメン店との信頼関係が築けるまで、地道な努力を続けてきました」と振り返る。井上氏に、これまでの道のりと今後のビジョンを聞いた。
井上:しかし、ミシュランに選ばれているのは、高級感のある和風の店構えで、サービスが行き届いていて、あっさりした清湯(ちんたん)ラーメンを出す店が多い。だけど、日本のラーメンにはこってりした家系などもありますし、もう少し大衆に寄った存在だと思うんですよね。
それを海外に発信するために、私たちと取引があるかどうかは関係なく、全国の有名ラーメン店店主による投票で「本当においしいラーメン店」をランキング方式で選出し、日本語だけでなく英語、中国語、スペイン語でプレスリリースを出しています。2021年からスタートして2度目の開催でしたが、今回は790人もの店主さんにご協力いただけました。
――心からのリスペクトがないとできないことです。創業時からラーメンへの強い思いがあったのですか。
井上:ラーメンは日本が誇る最強コンテンツであり、文化だと思います。しかし、正直に言えば、皮算用で始めた部分もありました。数多くの求人情報が集まっているリクナビやインディードのように、複数のラーメン店の商品が購入できるサイトを立ち上げれば、事業として成り立つのではないかと思ったんです。
でも、創業のきっかけは妻なんですよ。普段は家事で忙しい妻に、とある有名店で持ち帰り用に販売している冷凍ラーメンをお土産に買って帰ったら、めちゃくちゃ喜んだんです。そのときに、お店のラーメンを自宅で食べたいという需要は必ずあるはずだと確信しました。
実際のところ、家庭に入っている女性にとって、お店のラーメン、特に行列ができるような有名店のラーメンはめったに食べられないものであることが多いんですよね。小さい子供を連れて、ゆっくり食べられないですから。男性でもプレッシャーがあるじゃないですか。外に大勢並んでいるし、早く食べきらなくちゃって焦ることが(笑)。
ラーメン店に並ばなくても自宅で本物を楽しめるという体験を提供し、それを日本のラーメン文化として根付かせる。それが達成できた時に、私たちが事業をやっている意味を感じることができると思っています。
井上:席数×回転数で上限が決まってしまうラーメンの店頭販売以外で少しでも売上がお店に入れば、収益もだいぶ違ってくるはずです。
海外進出も私たちを介して、ラーメン店と海外をお繋ぎすることが目的です。多くのラーメン店主さんとお話をしていると、「海外に出店したけど、騙されてお店を取られてしまった……」という話が結構出てくるんです。ラーメン店が単独で海外展開するのは、言語の問題だけでなく契約書などのハードルもありますし、かなり難しいんですよ。
私たちも海外に再びセントラルキッチンを設置して店舗販売すべきなのか、越境ECがいいのか、勝ち筋を模索していますが、海外に日本の豊かなラーメン文化を正しく発信していくサポートができればと思っています。
<取材・文・撮影/中野龍 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>
最終更新日:1/29(日)8:47 bizSPA!フレッシュ