豊田章男氏、財界活動に注力か

豊田章男氏のこの時期の社長退任表明について、財界からは「経団連の次期会長就任への布石ではないか」との見方が出ている。自動車業界が迫られている脱炭素化への対応は個別の社だけでは限界がある。国内企業の代弁者として政府などとの交渉に当たる財界トップの役割に期待が高まる。



 経団連の十倉雅和会長の任期は通例だと2025年まで。会長職は、これまで慣例で副会長経験者から選ばれている。このため豊田氏がトヨタ社長を辞して財界活動に本腰を入れ、経団連会長就任を視野に「副会長に近く就くのでは」とみる財界関係者もいる。

 当初、豊田氏は「財界活動には消極的」(経団連幹部)と言われてきたが、経団連側は次期会長の最有力候補として豊田氏に財界への積極的な関与を求めてきた。そこで22年6月に実現したのが、移動手段全般の将来を議論する「モビリティ委員会」の創設だった。

 委員長には豊田氏のほかに十倉氏ら2人が就任。経団連会長が一委員会のトップに就くのは異例。十倉氏が指南役になり、政界との交渉方法などを含め、豊田氏に財界活動のイロハを伝授し、後任の会長候補に育てる狙いがあるとされる。

 モビリティ委員会では自動車などの脱炭素化をどう進めるかが大きな焦点になっている。欧州や中国で進むEV化を日本が急速に進めれば、既存のガソリン車やハイブリッド車に強みを持つ部品メーカーなどが仕事を失う可能性がある。自動車産業は550万人もの雇用を抱える。22年11月に豊田氏は十倉氏らとモビリティ委員会の代表として官邸を訪れ、岸田文雄首相と会談。終了後、「我々に働く機会を作ってください」と記者団に訴え、急速なEV化への懸念を示した。

 トヨタはガソリンエンジンと基本構造が同じで、水素を燃料とする水素エンジンの実用化を目指している。豊田氏にとって水素エネルギーの普及は悲願であり、日本が技術的な強みを持つ。このため、同委員会では脱炭素の切り札の一つとして、鉄道や航空機など産業全体での水素利用が論点の一つとなっている。豊田氏が経団連トップとなって水素の産業化を目指すことに、財界幹部は「あとは本人のやる気次第だ」と期待感を示す。【中津川甫】

最終更新日:1/26(木)21:47 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6451894

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