「採用格差」苦しむ中小と学生

2024年度卒の就活から採用直結型のインターンシップ(就業体験)が解禁されることになった。政府は22年6月、経団連と大学でつくる「産学協議会」の報告(「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」)を受け、インターンシップに関する就活ルールを改定した。



 大学3年生の3月に企業説明会開始、6月選考開始という日程ルールは変わらないが、インターンシップに参加した学生の情報を採用選考に使用できるようになる。

 対象となるインターンシップは「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」という名前で、参加期間は5日以上(専門活用型は2週間以上)、就業体験必須、募集時に必要な情報開示などの要件がついている。解禁は24年度以降のため、今の大学2年生の就活からとなる。

今回の採用直結型インターンシップの解禁についても、人事関係者の間では「経団連と文科省の間の建前論のルールにようやく政府がお墨付きを与えたにすぎない」と評されている。「インターンシップを採用に直結させていないと言っている企業でも、参加した学生が選考にくればインターンシップの内容を考慮せざるを得ないし、実態としては採用直結のインターンシップになっている」との声もある。

 実態としては今と変わらないことになるが、一方で採用直結のインターンシップがお墨付きを得たことの意味は大きい。

 前述の採用直結の「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」では、「学生の参加期間の半分を超える日数を職場で就業体験」を必須とし、「職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後にフィードバック」を行うことを要件としている。

 さらにこの要件などの基準を満たすインターンシップは「実施主体(企業または大学)が基準に準拠している旨宣言したうえで、募集要項に産学協議会基準準拠マークを記載可」としている。

 仮にインターンシップの期間が5日間であれば就業体験はわずか3日でよいことになる。修了後のフィードバックの内容も細かく規定されているわけではない。企業にとっては現行のインターンシップとあまり変わらないクリアしやすい基準となっている。

 多くの企業が「産学協議会基準準拠マーク」を募集要項に記載し、学生を集めるためのツールとして活用する可能性がある。

採用直結型インターンシップの解禁で「3月の広報活動開始、6月選考開始」という建前がますます形骸化していく。就活ルールの見直しはこれまで何度となく繰り返されてきた。

 採用選考時期をめぐる協定は古くは1929年から始まり、戦後は53年に当時の文部省・労働省および大学団体と日経連による「就職問題懇談会」を結成、卒業年度の10月1日以降を選考開始とする「就職協定」が結ばれることになった。

 だが、高度成長期の人材獲得競争の激化で協定破りが横行。60年代初期には7月末には大手企業の多くが採用活動を終了する「青田買い」が常態化し、60年代中盤以降は大学3年の2~3月に内定を出す企業も登場し、“早苗買い”“種モミ買い”とも呼ばれた。 

 その度に就職協定の日程が何度も改定され、2003年には経団連が「倫理憲章」を制定。賛同者に署名を求める形で05年卒の学生から適用されたが、それでもルール破りの企業がなくなることはなかった。

 就職協定がなくなり現行の政府の指針の3月広報解禁、6月選考解禁もインターンシップ選考によって機能しなくなった。

 そして今回の政府の方針変更によって、実施的に就活ルールなき時代に入ったといえる。

最終更新日:1/20(金)7:05 ITmedia ビジネスオンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6451220

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