2022年に加速した円安は、海外留学を志す学生たちも直撃した。激しいインフレが続く米国では、為替変動で仕送り金額が目減りする中、食料配布に並ぶ日本人学生もいる。そんななかで留学動向にさまざまな変化が出始めている。米国以外の国を目指す学生もいれば、米国にこだわる場合でも期間や行き先を見直す学生もいる。インフレと円安に苦しむ留学生の事情を取材した。(文・写真/サイエンスジャーナリスト・緑慎也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
2020年度に海外へ渡った日本人留学生の数は1487人で、実に前年度比98.6%減まで落ち込んだ。新型コロナウイルスの影響だった。2年後の2022年度には各国の入国規制などが緩和・撤廃され、日本人留学生の数も増加に転じる様相を見せていた。そんな中で押し寄せてきたのが円安だ。3月頃からじわじわ進み、10月には一時1ドル150円台を記録した。
こうした状況のなか、留学相談ではある変化が見られるという。「どうしても米国へ行きたいという人はやはり一定数いますが、いまのインフレや円安、学費値上げなどを鑑みると無理もできない。そこで期間や行き先を変えるという動きです」
たとえば、留学期間を1年間から半年間に短縮するケース、あるいは、留学先をロサンゼルスやニューヨークなど都市部の大学から中西部など地方の大学に変更するケース。どちらも学費や滞在費を節約することで「米国留学」を実現するための工夫だ。
米国以外の国を留学先として検討する動きもある。いま広がっているのが、欧州やアジアの国々への留学志向だ。
英国を除けば、欧州の大学の学費はおおむね米国より安い。ドイツのように自国の学生のみならず海外からの留学生に対しても公立大学の学費が無料という国もある。
留学生にとって欧州の大学の利点は学費だけではないと語るのが、関西国際大学国際コミュニケーション学部教授で、副学長の芦沢真五さんだ。
「たとえば」と上奥さんが言う。「大学が提供する奨学金と組み合わせて、学費や寮費、食費を含め総額1万6000ドル(1ドル130円で約208万円)の低予算で行けるところもあります。ケンタッキー州、ミズーリ州など地方の大学ではありますが」
「世界で日本だけ給料が上がらない状況です。そのせいか、自分の子どもには国内だけにこだわらず、どこでも生きていける力をつけてほしいと留学を考える親が増えてきた。コミュニケーション力を高めたいのなら、まずは半年間オンライン留学で実践的な英会話を学び、もう半年はワーキングホリデーを利用して現地で働く手もある。円安だからとあきらめる必要はない」
円安や物価高が、留学生たちを厳しい状況に追い込んでいるのは間違いない。しかし、自身の将来を見据えながら、さまざまな留学プランを模索し、海外での学びを実現した先に、新しい世界が広がるのだろう。
最終更新日:1/18(水)18:05 Yahoo!ニュース オリジナル 特集