JA共済という農協が販売する保険のようなもののノルマに農協職員が悲鳴を上げている。ノルマを達成するために自分や家族に必要のない共済をかける、いわゆる「自爆契約」を結ぶ職員たち。さらには各地でノルマを原因とした不祥事も。
都内在住の女性(39)
「怖かったんですよね。誰かが装って書いているということなので」
この女性は、JA南アルプス市と父親が結んだ共済契約の保障対象になっている。
しかし、手続きは彼女の知らぬ間に行われていて、書類にはなぜか、女性の“署名”とされるものが書かれている。
自分の名前を書いてもらうと…ひらがなの【ぞ】の形が違う。
後に、これは農協職員が勝手に代筆していたと判明した。
身長、体重、勤務先など、農協側に告知する項目もでたらめだ。父親は、この契約を結ぶことを了承していたが、それでも代筆は許されない。
農協職員に代筆された都内在住の女性(39)
「こんな署名が正式なものとして通用してしまったら、全然違う契約に変えられてしまっても、まかり通ってしまうと思うので、信用問題というか」
なぜ職員は、こうした不正な代筆契約を行ったのか?
JA南アルプス市に質問状を送ると…
JA南アルプス市の回答
「お手を煩わせないようにとの過度な配慮が起因となり、代筆が行われたものとなります」
と、女性に署名する手間を取らせないためだったと回答。
そして「過大なノルマが代筆契約に繋がっているのではないか」と問うと、「ご質問いただいたような事実はありません」と否定した。
山本恵里伽キャスター:
なぜ「自爆契約」までしなければいけないほどの「ノルマ」が課されているのか?
職員に話を聞くと、背景には、「農業に従事している農協の正組合員数」が減っていることが関係しているとの指摘があります。実際に、この20年間で100万人以上減少しています。
こうしたこともあってか、農協の本業である農業関連の収益は赤字に陥っています。一方で、黒字なのは「信用事業」、JAバンクと先ほどの共済事業です。
ただし、JAバンクは近年の低金利で今後成長は見込めないということで“共済頼り”の状況になっていて、職員の方に多くのプレッシャーがかかっているのでは?ということなんです。
こうした状況がある中、2022年12月、農協出身の野村農水大臣は会見で「目標を達成できない職員ほど、そういうことを言い出すんですよ」と述べ、“自爆契約の原因が職員にある”ともとれる発言をしました。
こうした発言について職員に話を聞くと、「現場の実態を分かっていない」と憤っていました。
小川彩佳キャスター:
大臣の発言は追い詰められている職員をさらに追い込みかねないものですし、こうした発言がありますと、改善にはまだまだ時間がかかるのではと感じますね。
JA共済連や各農協には指針の改正案や、現場の声を真摯に受け止め、健全な働き方ができる環境を作っていただきたいと感じます。
最終更新日:1/13(金)23:06 TBS NEWS DIG Powered by JNN