クリスマスを直前に控えた2022年12月中旬の週末。東京・原宿の明治通り沿いにあるカナダのアウトドアブランド、アークテリクス(以下アーク)の旗艦直営店は、若いカップルや男性客でにぎわっていた。ただ、年末商戦のまっただ中にもかかわらず、メンズコーナーに陳列されている商品は目に見えて少なく、なんとも寂しい印象だ。
「(化繊綿入りアウターの)アトムARフーディーはないんですか?」「シェルのベータLTジャケットがほしいんですけど」
そんな本格派の高級アウトドアブランドが今、日本で飛ぶように売れている。店頭に並べればすぐに売り切れるほどの人気ぶりで、公式のオンライン通販も多くの商品が完売状態。安価なファストファッションにおされて不振が続くアパレル業界から見れば、なんともうらやましい話だ。
■「登山に関心のない人たち」が消費を牽引
ではなぜ、これほどまでに人気に火がついたのか――。
アークは長年にわたってアジアでは現地の代理店に販売を任せていたが、買収して親会社になったフィンランドの総合スポーツ用品企業、アメアスポーツが2014年から直接販売する体制に変更。これを機に日本でも直営店の展開を始め、2022年10月には東京・丸の内に国内13店舗目となる直営店をオープンした。
ただ、さすがにここまでノースを着る人が増えてくると、ファッションにこだわりのある人ほど、街中でかぶりにくい、新たなカッコいいブランドを探し始める。そうしたタイミングでアウトドアファッション系のユーチューバーたちがこぞってアークの商品を取り上げ始めた影響もあり、いわゆる「にわかアークファン」が一気に増えたのだ。
■中国人転売ヤーが出現
さらに品不足に拍車をかけているのが、人気に目をつけた転売ヤーの存在だ。転売が横行するのはノースの人気商品でも同じだが、アークの場合は、日本に住む留学生など多くの中国人転売ヤーが出現している点に大きな特徴がある。
■アウトドアシーンでの着用率を上げたい
「街着として買っていただけるのはありがたいが、やはり登山やクライミング、バックカントリーなど、アウトドアでもっと多くの人に着てほしい。日本ではそうしたアウトドアシーンでのアークテリクスの着用率がまだまだ低い。そこを着実に上げていくのが一番の大きな課題だと考えている」(高木氏)
こうした想いは直営店の販売スタッフたちも同様だ。ある販売員はこうこぼす。「お客さんの数は増えたけど、タウンユースで買っていく方が大半なので、接客していてお客さんと山の話をしたり、登山の服装のアドバイスを求められたりすることがむしろ減った。それがすごく寂しいんですよ」。
最終更新日:1/7(土)15:54 東洋経済オンライン