予約殺到 命を救うぬいぐるみ病院

世界初のぬいぐるみの「治療」を行う「ぬいぐるみ病院」(大阪府豊中市)が開設から10年目を迎えた。これまでに約1万7000体の「患者」を救い、入院予約は数年待ちだという。堀口こみち理事長(47)は、男性サラリーマンからの依頼も少なくないと話す。

■大切な家族「治療」し10年目

「コロナ禍が始まって3年。外出自粛で人とも会いにくかったなかで、感染しないぬいぐるみをハグして『不安やつらさから救ってもらった』といった声も多く聞きました。患者さまの治療を通じて、ご依頼主の心のケアを―というのが当院を開設した理由です」

2013年12月に完全予約制の同病院を開業した堀口さんの基本方針は、「物として修理するのではなく、持ち主にとってかけがえのない存在の『命』を救う」ことだという。ぬいぐるみは「ご依頼主にとっては大切な家族ですから」と説明する。

スタッフと2人で始めたが、現在は社員・スタッフ合わせて30人に。内科、外科、整形外科、耳鼻科などもあり、体内の綿の入れ替え、切り傷の治療、皮膚移植や植毛も行う。「預けた後にご自身のぬいぐるみが寂しい思いをしているのではというご心配を持たれないように」と入院中の写真も送る。入院は1万4000円から可能だ。

30~50代からの依頼が最も多いというが、男性からの相談もある。「建築関係の一人親方が、手のひらサイズの小さなうさぎさんを2人連れてこられたことがありました。買ったときの状態ではなく『リーマン・ショックのときの顔に戻してほしい。当時は鬱になりそうだったが、いまがあるのはこのうさぎのおかげだから』ということでした」。最終的には入院させずに連れ帰ったというが、堀口さんには忘れられない依頼だった。

堀口さんは独立前、医療機器メーカーで働いていた。「繊細な性格からうまくいかないことが多い人生でしたが、本当にやりたいことをしたい」と開業を決意した。当初は倒産危機に見舞われたこともあったが、ツイッターで話題が沸騰したことをきっかけに、電話が鳴りやまなくなった。

殺到する入院予約で今度は受付がパンクするなど新たな悩みも生まれたが、サービスの質を下げずにすべての依頼を受け付けようと決意。走りながら課題を解決するなかで、新たなアイデアも次々に生まれている。

■「医師会」も発足

堀口さんは今年、「日本ぬいぐるみ医師会」も発足させた。「日本の和の精神をぬいぐるみの治療に生かせたら。心ある方と一緒にやっていきたい。修理するという技術ではなく、治療するという心を広めたいんです。海外からも依頼が来るようになりました。世界中のぬいぐるみの命を救いたい」と意欲を見せた。

最終更新日:12/28(水)10:32 夕刊フジ

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6448993

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