お宮参りやる? 育児の選択に悩み

2カ月目に入り、「ここからが大変」と言われた、赤ちゃんのいる生活。“ギャン泣き”だけでなく、子どものイベントごとが始まり、必要物資も経費も増えていきます。そこで直面したのが子育ての幅広い“オプション”の問題。子どもを持つまで知らなかったリアルな悩みを振り返ります。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)

例えば、秋から冬になってくると、赤ちゃんのおむつを替えるときの「おしり拭き」の冷たさが気になってきます。拭く親が冷たいというよりは、冷たさにびっくりして拭かれる赤ちゃんが泣き出してしまうことがあり、ちょっと困るところ。

ここで、驚いたことに、おしり拭きには「おしり拭きウォーマー」という専用家電が存在するのです。値段は5000円前後と、「おしり拭きを温める」ためだけにこの家電を買うかどうか、悩ましいところです。

ウエットティッシュのようなパッケージになっている使い捨てのおしり拭き自体、つい数カ月前は見たことがありませんでした。それを温める家電を買うかどうか悩む今とのギャップにくらくらします。

他にも、赤ちゃんは自分で鼻をかめないため、「鼻吸い器」があると便利ですが(かつては親が口で吸っていたという話も聞きますが、もちろん衛生的ではありません)、これにも手動から電動まで幅広いラインナップがあります。

しかし、鼻が詰まっている場合は綿棒で取ってあげることもできるので、鼻吸い器自体、なくてもいいと言えばいいのです。

そもそも、すでに手放せないベビーカーでさえ、三輪か四輪か、生後1カ月からのA型を買うかレンタルにするか、7カ月からのB型はどうするか、オートブレーキ機能は必要か……と夫婦の議論は尽きませんでした。

首がすわればバウンサー、離乳食が始まればハイチェア、発達段階に応じた絵本やおもちゃと、子どもの成長に伴い無数の選択を迫られることになるわけです。

コリック(黄昏泣き)も始まり夫婦とも疲弊する中、予算を決め、商品の当たりをつけ、口コミを確認しーーお金とモノの置き場所には限りがあるので、「鼻吸い器は電動にしよう」「おしり拭きウォーマーはなくていい」と都度判断するのは意外と負担です。

【参考】赤ちゃんギャン泣き「コリック」「黄昏泣き」なぜ起きる?専門医に聞く イライラしても〝絶対NG〟な行為
https://withnews.jp/article/f0221212000qq000000000000000W0bx10701qq000025326A

こうした悩みに直面したとき頼りになるのは、周りで子育てをしている人の意見であることもしばしば。ネットには情報がたくさんありますが、多すぎて決め手に欠けるのです。そんなとき「XXさんの家はこうしたって」という情報は、最後の一押しになりやすいと感じます。

逆に言えば、子育ての悩みは子育ての当事者や経験者間で主に語られて、その外に出にくいということでもあります。当事者以外にとって、そうした情報は必要も、興味もないのだから、当然と言えば当然なのですが。

ただ、例えば「お宮参り」といった情報について、「知ってる」「知らない」がくっきり分かれてしまうことには、このように構造的な理由もありそうです。

そのことをあらためて感じさせられたのが、子どもの写真・動画共有アプリの「家族アルバム みてね」のニュースです。

2022年8月、同アプリの利用者数(iOS・Androidアプリとブラウザ版の登録者数の合計/海外を含む)が1500万人を突破したことが発表されました。実はサービス開始は2015年4月で、今年で7周年を迎えます。

提供するのは株式会社ミクシィ。同社によれば、国内の子どもを持つ親の約47%がみてねを利用しているとのこと。同社の決算説明会の資料を確認すると、国内だけのユーザー数でも約1000万人が利用しているようです。

もう一つのポイントは、孫の写真や動画を見るために、祖父母世代もこのアプリを使っていること。同社はこうして獲得した高齢者ユーザーに対しても「みてねみまもりGPS」「みてねコールドクター」が使用できるようにして、事業拡大を図っています。

一方で、こうして「ユーザー数の伸び」が注目されて経済やITのニュースになる、つまり子育て当事者以外にも広がると、サービス自体を「知らなかった」と驚く声がSNSに投稿されます。

国民の10人に1人が使っていても、当事者以外にはまだまだ知られていない。子育てにまつわることが「知ってる人は知ってる」情報になりつつあると言えるのではないでしょうか。

かく言う我が家もユーザーですが、このアプリの存在自体、私は子どもが生まれるつい数カ月前までは、まったく知らなかったのです。

今では妻が日常的に子どもの写真をアップして、義父母やきょうだいからのリアクションを楽しみにしているよう。「家族外に勝手に共有しない」などある程度のルールを事前に伝えておけば、離れて住む親族にも子どもの成長を見守ってもらえる、いいサービスだと感じます。

子育てを軸とした事業が拡大し、経済圏ができつつある。つい最近まで「知らなかった」側だった私にとっては、置いていかれていたようで、ちょっとショックでもありました。

昨今、当事者でない人が子育ての情報に接する機会は少なくなっているかもしれません。少子化が進む中、この傾向は、今後も加速していくと考えられます。

「子育ては大変」という漠然としたイメージだけでなく、「おしり拭きウォーマーと鼻吸い器のオプション」のように、具体的にどんな悩みがあるかがもっと知られることで、当事者でなくても子育てをよりリアルにシミュレーションできるようになることを願っています。

最終更新日:12/19(月)7:00 withnews

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6448123

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