ご当地グルメの転売横行 注意点は

人気のご当地お取り寄せグルメで、商品の価格をつり上げて稼ぐ通称「転売ヤー」によるインターネットでの転売が横行している。食品の転売は一律に禁止されているわけではないが、高額転売や品質管理などでトラブルとなっているケースもあり、専門家らは注意を呼びかけている。冬休みも迫り巣ごもり需要も高まる中、消費者が注意すべきポイントとは?



 ◇4倍の価格で転売

 「本当に(自社商品を)求めている人たちに適切な価格で買ってもらい、おいしく食べてほしい」。中華料理店の老舗「三宮一貫楼(ろう)」(神戸市)の安藤孝志常務(49)が唇をかんだ。同店の豚まんは、ふんわり甘い皮に厳選したタマネギをたっぷり刻んだあんが入り、全国から訪れる客もいるほどだ。

 そんな人気に転売ヤーが目を付けた。同社は3月ごろにネット上で約4倍の価格で豚まんが転売されていることに気付いたという。安藤さんは「人の目を欺き、自分の利益にしようとすることは良くない」と語気を強める。自社ホームページ(HP)やSNS(ネット交流サービス)で転売への注意喚起を行っているが、根絶することは難しいとみており、「転売物の品質は会社として保証できない。自社のオンラインショップで購入してほしい」と訴える。

 日本では民法で「契約の自由」が認められており、スポーツやコンサートのチケット、偽ブランド品などの転売は法規制されているが食品の転売は一律に規制されていない。ただ、食品問題に詳しい岩月泰頼(やすより)弁護士によると、賞味期限や消費期限を偽って販売すること▽腐っているなどの健康を害するもの▽冷凍食品の場合はマイナス15度以下で保存していないもの――を販売すると食品表示法違反や食品衛生法違反に問われる可能性があるという。

 ◇「解けていた」食中毒のリスク

 食品の中でも特に転売トラブルが目立つのが冷凍食品だ。三宮一貫楼の豚まんも冷凍食品で、ほかにも被害を訴える業者は多い。ギョーザ製造の「金星(きんせい)食品」(群馬県太田市)は薄い皮に県産中心の野菜の甘みや肉のうまみがしっかりつまったギョーザが人気。2020年にテレビ番組で同社のギョーザが特集された直後は通常の約15倍の冷凍生ギョーザの取り寄せ注文があり、製造が追いつかない状態になった。転売に気が付いたのは、この翌年に同番組が再放送された時期だ。

 同社の松尾千代子取締役(55)は「『解けた状態でギョーザが届いた』などと複数件クレームの電話を受けた」と振り返る。電話では返品の可否などを尋ねられたが、会社で販売していない通販サイトが購入元だったため、諦めてもらうほかなかったという。

 同社によると、冷凍生ギョーザの自然解凍は菌の繁殖につながり、食べると食中毒を発症するリスクがある。その後はHPで警告を出し、転売の苦情は無くなったというが、松尾取締役は「不適切な管理状態や、数倍の価格で転売されることで会社のイメージも損なわれる。本当に許せない」と憤る。

 常温保存できる缶詰や袋詰めの商品や、品質や在庫管理の難しい生鮮食品は「転売ヤー」にとって「うまみ」が少ない。一方、冷凍食品は消費者から在庫状態を確認することが難しく、賞味期限の改ざんの恐れもあり、岩月弁護士は「冷凍食品は特にトラブルになりやすい」と話す。

 こうした状況を受け、食品の通販が多いネットサイト「楽天市場」では、消費者向けに販売された食品の転売を18年から禁止。食品メーカーなどの声を受けての対応で、違反を発見した場合は出店者への注意や掲載削除を請求する取り組みを進めているという。

 ◇正規の販売元を調べて

 ただ、「転売ヤー」の利用が多いフリーマーケットやオークションのサイト・アプリでは規制はあるものの被害防止には至っていないのが現状だ。ネット問題に詳しい高橋暁子・成蹊大客員教授(情報リテラシー)は「『住所を記入するのが煩わしい』などの理由で正規の販売元からではなく、使い慣れたフリーマーケットやオークションなどのサイト・アプリで購入する人もいるが、ネット大手だからといって信頼してはいけない」と指摘。「転売物でも広告費を支払えば人目に付きやすいところに表示され、コメントや評価点数も自作自演でつり上げられるサイト・アプリもある。間違えて購入しないよう、正規の販売元を調べてほしい」と注意を促す。【益川量平】

最終更新日:12/19(月)13:09 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6448101

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