緊急事態宣言の再発令は、回復軌道にあった日本経済に再び大きな影響を与えそうだ。今年初の取引となった東京株式市場では4日、宣言発令への警戒感から、日経平均株価(225種)が昨年末終値比で一時400円超値下がりした。
日経平均株価は前営業日の昨年12月30日、年末として31年ぶりの高値にわいたが、年明け初日の取引はお祝いムードはなかった。4日の終値は185円79銭安の2万7258円38銭だった。1年の取引初日の「大発会」としては3年連続の下落となった。緊急事態宣言により人の移動が抑制されるとの懸念が高まり、百貨店や鉄道、航空など、影響を受けやすい業種で売りが膨らんだ。
■昨年4~5月の宣言発令時は22兆円消失
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、1都3県を対象に1か月間、緊急事態宣言が発令された場合、4兆8900億円の個人消費が失われると試算している。日本の年間の国内総生産(GDP)の0・88%に相当する。昨年4~5月に全国で宣言が発令された時は計約22兆円の消費が消失したと見込んでおり、対象を1都3県、1か月間に限ることができれば影響は2割強に抑えられるとみる。
ただ、木内氏は「収束を期待して何とか持ちこたえてきた企業の破綻や廃業が増え、失業が増える恐れがある」と指摘する。2021年1~3月期の実質成長率がマイナス成長となって景気が「二番底」に陥る恐れが大きいとし、政府が給付金や助成金といった直接支援を増額するなど「企業、個人の支援を強化する方向に経済政策を大きく見直すべきだろう」と訴えた。
昨春の発令時には外出自粛が広がり、外食や観光など幅広い産業が打撃を受けた。外食大手ロイヤルホールディングスの広報担当は「(営業時間短縮などの)要請に従うが、社会のインフラとしての役割もある。バランスを考えて対応したい」と話す。
政府の観光支援策「Go To トラベル」事業は11日まで一斉停止中だが、菅首相は4日の記者会見で、再び宣言が出れば再開は困難との見方を示した。
観光業界からは「11日まで耐えれば徐々に客が戻ると信じて我慢してきた。先が見えず、不安だ」(高級ホテル社員)との声が聞かれた。大手航空会社の役員は、「トラベル事業は旅客激減の中にあって救いとなっていた。経営の先行きが一層深刻になる」と危機感を示した。
最終更新日:1/5(火)18:44 読売新聞オンライン