2022年映画興収 ヒット格差は拡大

明るい話題に沸く2022年の映画界。コロナで止まった洋画配給の本格復興に位置付けられた今年は、邦画洋画含めて興収100億円を超える作品が4本(最終興収見込み作を含む)と歴代2番目に多い年になるとともに、秋までの興収で前年比140%の好推移。年末年始の正月興行を前に、市場規模をコロナ前に戻すかのような勢いを見せている。



 しかし、その裏側を見ると喜んでばかりはいられないようだ。中クラスのヒット作が減少する“ヒット格差”は広がり、従来の制作構造から抜け出せない邦画実写の大規模公開作は時代の流れに取り残されつつある。いままさに映画界は、これまでの業界常識やヒット方程式が通用しない、コロナ以降の課題とジレンマに直面している。

大ヒットは生まれたが、年間興収ではどうか。1~10月までの興収は前年比140%ほどで推移している。そのあとは、11月は最終興収150億円前後が見込まれる『すずめの戸締まり』(12月4日時点で75.9億円)があり、12月の『THE FIRST SLAM DUNK』も幸先の良い出足を見せている。

 正月興行でどこまで年間興収が伸ばせるかによるが、2021年の1618.9億円を大きく上回るのは間違いなさそうだ。10月までの勢いを継続できれば、2000億~2200億円台がひとつの目安になるだろう。

たしかにコロナ禍の2年間と比べれば、大作がシネコンに戻ったことで3年ぶりに洋画興行を大きく底上げした。しかし、見方を変えるとその実情は異なる。コロナで洋画が止まった時期を経て、これだけ知名度も人気も大きなシリーズ続編の公開が続いているにもかかわらず、ほとんどがシリーズ前作から興収を大きく落としているのだ。

 シリーズ続編が前作より興収が下がるのはいまにはじまったことではない。もちろん上がる作品もあるが、下がる作品のほうが圧倒的に多い。だが、今年は一部を除きその落ち幅が従来以上に大きくなった。

現状では、基本的に劇場公開から配信まで45日間を設ける「45日ルール」がデフォルトになっているが、配信でドラマや映画を見ることに慣れたファミリー層や若年層のディズニーファンがそちらに移っていることは想像に難くない。

 ただ、ディズニーは劇場公開から生まれる社会的ヒットがコンテンツ価値を高める重要性を理解している。ディズニープラス(配信)を主軸に構える姿勢はコロナ以降変わっていないが、劇場と配信の両方をどううまく事業として成り立たせ、利益を最大化していくかがこれからの大きな課題だろう。

テレビドラマの映画化や、人気漫画を原作にして話題の俳優をキャスティングする“邦画のヒット方程式”や“映画界の常識”が通用しない時代になって久しい。

 大高氏は「映画に目を向けさせることが、コロナ前より難しくなっているのは明らか。それにもかかわらず、これまでと同じような作品を作っていれば邦画実写は配信に負けてしまう。観客にひっかかる“なにか”のある作品を作っていくことを真剣に考えないといけない」と警鐘を鳴らす。

最終更新日:12/7(水)14:04 東洋経済オンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6446909

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