マヂラブも揺れない 登山鉄道

漫才やコントなどで、鉄道にまつわるネタは以前から多いが、マヂカルラブリーが「M-1グランプリ 2020」で披露した姿は、つり革につかまりたくなくて頑張りすぎる様子を軸にした、予想外の角度のものだった。ライターの小川裕夫氏が、ツッコミの村上から揺れて当然な事例としてあげられた箱根登山鉄道は、実際にそんなに揺れるのか揺れないのかについてレポートする。

スイスの山岳鉄道といえば、急峻な地形を走るために独特な性能を持つ車両が走っていることでも知られる。同じように箱根登山鉄道が所有する車両も、ほかの日本の鉄道会社と異なった性能を備えている。

「箱根登山鉄道の電車は、すべてがモーター車です。自動車に例えるなら4WDということになります。そのため、登坂性能に優れています。また、ブレーキは空気ブレーキ・電気ブレーキの2種類が通常運転時に使われますが、緊急時も想定してハンドブレーキ・レール圧着ブレーキ、合計で4種類のブレーキを備えています」(同)

 こうした車両性能のほか、箱根登山鉄道には独特の工夫もある。本来、列車が走ると車輪とレールが擦れて、車輪は磨耗する。磨耗を最小限に抑えるため、一般的な鉄道車両はグリースという潤滑油を塗っている。しかし、急勾配区間の多い箱根登山鉄道でグリースを使用すると、車輪が滑って急な坂道を登れない。その対策から、箱根登山鉄道は油の替わりに水を撒くことで磨耗を防いでいる。箱根登山鉄道の車両の床下には、散水用のタンクがあるのだ。

 様々な工夫によって、箱根登山鉄道は急勾配と急カーブを克服。マヂカルラブリーは「箱根登山鉄道もこんなに揺れてなかったけど」と口にしたが、乗車中に揺れが気になることはほとんどない。

「急勾配・急カーブの多い路線ですが、特に揺れることはございません。ベビーカーや車イスのお客様も、問題なくご乗車いただけます。ただ、山岳路線ですからベビーカーや車イスが動かないようにロックをきちんとかけてくださるようにお願いをしています」(同)

 箱根登山鉄道は2019年の台風19号で線路が損壊し、長らく運休を余儀なくされた。復旧工事は予定よりも早く終了し、夏から運転を再開した。しかし、今度はコロナ禍で利用者激減という憂き目に遭っている。

 復旧後、箱根登山鉄道は早急に売上回復を目指したかったことだろう。GoToの恩恵はあっただろうが、それでも以前より売上は低迷している。しかも、書き入れ時ともいえる箱根駅伝も、コロナ禍で無観客がアナウンスされている。その影響で、例年のような多客は見込めない。

 2年連続の災禍は、不運としか言いようがない。それでもM-1優勝のマヂカルラブリーのネタによって箱根登山鉄道が注目を浴びるという希望も見えてきた。ちなみに、マヂカルラブリーのM-1ネタは、放送翌日に箱根登山鉄道社内でも話題になったという。

最終更新日:1/2(土)10:26 NEWSポストセブン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6381047

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