路線バスといえば、50~60人乗りの大型車両を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし実際には車両の種類や大きさも様々。香川県では、なんと軽自動車を使った路線バスが走っています。
運転手1名を除くと、定員は3名。おそらく「日本一コンパクトな車体の路線バス」ではないでしょうか。
軽自動車の路線バスが走っているのは、うどん出汁に使う「いりこ」(カタクチイワシを加工・乾燥したもの)の生産で知られる観音寺市の伊吹島です。
この“バス”は、島の住宅街をぐるりと一周し、伊吹真浦港のフェリーターミナルでは全便が観音寺港との定期船に接続しています。朝・昼・晩の3往復され、うち朝晩は十数分の間隔で続行便が設定されており、いったん到着した車は、慌ただしく折り返していきます。
なお“バス”車両ではあるものの、普通の自家用車(ダイハツ・ミラ)にマグネットのステッカーを貼っただけ。ナンバープレートは黄色です。このバスが軽自動車で運行されている最大の理由は、島独特の道路事情があります。
伊吹島は3年に1度の「瀬戸芸」こと瀬戸内国際芸術祭の会場にもなっているため、会期中には島外からの観光客も、たまに“バス”を利用するのだとか。ちなみに、この島で展示された瀬戸芸の作品のひとつには、「伊吹島ドリフト伝説」(島の狭隘な道路をバイクで駆け抜けるバーチャルゲーム)もありました。
そして、瀬戸芸の会期中でなくても眺めが圧巻なのは、漁場に近い平地のほとんどを占めるいりこ工場です。漁船が到着次第、原料となるカタクチイワシが海岸線に伸びる高圧ポンプから工場内へ送り込まれます。
カタクチイワシは鮮度が落ちるのが極端に早く、水揚げ後30分内に加工を始める必要があるとのこと。四国本土側の観音寺港まで輸送していては間に合わないので、漁場に近い伊吹島の工場がいまもフル稼働しているのです。この工場に観音寺港から船で通勤する人々も多く、観音寺を朝6時過ぎに出るフェリーの始発便は、“通勤ラッシュ”と言っていい賑わいぶりです。
伊吹島のいりこは全国でブランド品として販売され、全国には「伊吹」の名前を冠した食堂や、「伊吹島のいりこ使用」とポスターを貼り出しているうどん屋さんも。この島では、東京や大阪で高級品として販売されているものを、はるかに格安で買い求めることができます。
最終更新日:11/20(日)20:06 乗りものニュース