葬儀を終えた後の遺影は仏間やかもいに飾るもの―。そんな「常識」が変わりつつある。自宅に仏間や大きな遺影を飾るスペースがないなどの理由で、小さいサイズにしたりデータ化してスマートフォンに保存したりする人も。最近の遺影事情を紹介する。
遺影研究に取り組む国立歴史民俗博物館(千葉県)の山田慎也教授(民俗学)によると、一般家庭で遺影を葬儀に用いたり、家に飾ったりするようになったのは第2次世界大戦後という。「戦死した息子や夫を供養したい」と考えた遺族が、戦地に赴く際に撮っておいた写真を引き伸ばすなどして一気に広まったとみられる。
ただ、「明治時代末期にはすでに遺影という形はあった」と山田教授。写真のほか、コンテという画材を使って描いた「刷筆(さっぴつ)画」などを供養のために寺へ奉納していた例もある。
近年の遺影の小型化などの背景には「住宅事情だけでなく家を継いで仏壇を守り、先祖を供養する意識の低下があるのではないでしょうか。現代人は『家』単位でなく『一個人』としてふるまっている」と話す。
一方、遺影を飾る風習は「今後もなくならない」と山田教授はみる。例えば、結婚で実家を離れた娘が個人的に、母親の写真を身近に飾るなどだ。「亡くなった人に会いたいと遺影を眺める姿は変わらないでしょう」
最終更新日:11/20(日)11:39 中国新聞デジタル