新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、初めてのお正月を迎え、「おせち料理」にも異変が生じている。
「売り切れたスピードは例年の倍以上で、異常な伸びだった。いくら巣ごもりと言っても、以前からおせちを食べる文化がない人には響かないと思っていた。なぜこんなに売れているのか正直把握できていない」
百貨店大手の三越伊勢丹でおせち販売を担当する中本光昭マーチャンダイザーは驚きを隠さない。同社が展開する伊勢丹では、2020年10月の予約開始当初から注文が好調で、売り上げは前年比で1割ほど増えた。
■6月からおせち生産を開始
需要の拡大を受けて、おせち製造にかかわる企業も恩恵を受けている。冷凍おせちの製造を受託するアサヒウェルネスフーズ(大阪府貝塚市)はその1社だ。同社は卸売業者を通して具材を調達しておせちを生産し、通販会社や百貨店、スーパーマーケットなどへ卸す業者に販売している。
同社ではおせちの需要が伸びることを2020年前半の段階から想定し、生産量の増加に対応するために例年より1カ月早い2020年6月からおせち生産を開始。おせちの見込み量のうち7~8割を11月までに製造し、12月の実際の受注状況を受けて残り分を調整する方法で生産するが、今回は12月の注文が見込み量を大幅に超過した。その結果、受注したおせちの段数は、前年比2割増の78万段にまで増加したという。
公式な統計はないものの、業界関係者の話を総合すると、おせちの2020年の市場規模は600億~630億円程度で、約400万セットが販売されたとみられる。約300億円だった2000年頃からの20年間で市場規模は倍増している。
市場拡大の背景には、おせちを家庭で作らなくなったことがある。従来は年末に食材を買い出して手作りする家庭が多かったが、共働き世帯の増加などの理由で減少傾向に。市販品を購入すれば、多忙な年末の時間を有効に活用できるとあって、一度購入すればリピーターになる人も多い。
最終更新日:1/1(金)9:01 東洋経済オンライン