日銀総裁 緩和継続で経済支える

[名古屋市 14日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は14日、名古屋市で行った金融経済懇談会であいさつし、国内外の経済・物価情勢や金融市場の動向を巡る不確実性は「きわめて高い状況だ」と指摘し、現在は、金融緩和の継続で経済活動をしっかりと支えていくべき局面だと述べた。

先行きの経済・物価見通しや上下双方向のリスク要因を丹念に点検して適切な金融政策運営を行っていく考えも示し、金融緩和で企業が賃上げできる環境を整え、賃金上昇を伴うかたちで物価目標の持続的・安定的な達成を目指していると語った。

<海外の経済・物価に警戒>

黒田総裁は、経済の先行き不透明感として特に海外の経済・物価動向を巡るリスクに注意が必要だと述べた。大幅なインフレ率の上昇を背景に、欧米の中央銀行は金融引き締めを行っているが、黒田総裁は金融引き締めにより、景気が想定以上に後退するリスクが指摘される一方、不十分な引き締めによりインフレが高止まりするというリスクも意識されていると述べた。

引き締めが不十分な場合、結局は大幅な金融引き締めが必要となり「経済をより大きく下押しすることになる」と懸念を示した。資産価格の調整や新興国からの資金流出など、国際金融市場への影響を慎重に見ていく必要があると述べた。

世界経済の減速懸念を受け、国際的な資源価格はこのところ下落しているが「ウクライナ情勢の展開などによっては、再び上昇に転じる可能性もある」と述べた。

黒田総裁は質疑応答で「急激な為替の変動は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画策定を困難にするなど日本経済にとって望ましくない」と改めて指摘。引き続き政府と緊密に連携し、金融・為替市場の動向やその日本経済・物価への影響を十分注視していく方針だと説明した。その上で「資源高や為替相場の動向が、企業・家計に与える影響を丁寧に点検しつつ、金融緩和による需要面からの下支えを通じて経済活動をしっかりサポートしていきたい」と述べた。

黒田総裁は最近出席した一連の国際会議での議論を踏まえ、米国による大幅な金融引き締めについて「アジア通貨危機やリーマンショックの際のようにアジアの新興国が直接的に影響を受けるということにはなっていない」とも話した。

<賃金上昇に期待感>

黒田総裁はあいさつで、賃金上昇に期待感を示した。需給ギャップの改善に伴って労働需給のタイト化が進むことが予想されると指摘。特にサービス業では、新型コロナウイルスへの感染の落ち着きで需要が回復し、サービス業に多い非正規労働者の賃金上昇が見込まれるほか、中小企業などの正規労働者の賃金にも波及が予想されると述べた。また、女性や高齢者の労働参加が進んだことで「追加的な労働力の供給余地が徐々に小さくなっている」と指摘した。

その上で「来年春の賃金交渉では、労働需給の引き締まりに加え、これまでの物価上昇が相応に賃金に反映される」との見通しを示した。今後の賃金動向には内外経済の動向などに左右される面もあり、丁寧に点検していく必要があるとした。

黒田総裁は、日本経済は依然としてコロナ禍からの回復途上にあり、マクロ経済の需給ギャップはなおマイナス圏内にあると説明。経済回復で今年度後半のいずれかの時点で需給ギャップはプラスに転じるとみているが「現時点で、需要面から物価上昇率が高まっているわけではない」とした。現在は輸入物価の上昇を起点とするコスト高の価格転嫁で2%を上回る物価上昇率になっているが、この影響が減衰していくに従って来年度以降の物価は2%を下回る見通しだと改めて述べた。

<日本国債の信認>

懇談会では、英国のトラス前首相の経済政策を巡って起きた市場混乱についても質問が出た。黒田総裁は日本の政府債務残高について、GDP(国内総生産)対比で250%を超えて非常に高いが、政府が長期的な債務残高の減少にコミットしていることで「国債に対する信認は失われていない」と述べた。

(和田崇彦 編集:青山敦子)

最終更新日:11/14(月)14:16 ロイター

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6444662

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