商社大手5社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事(以下、伊藤忠)、住友商事、丸紅)の中間決算が出揃った。円安、資源高、インフレを追い風に2023年3月期通期予想の上方修正ラッシュに沸いている。
微減の伊藤忠以外は、4社が通期予想で最高益を見込む。トップの三菱商事は商社業界初となる「年間利益1兆円超」の大台に乗せた。三井物産も1兆円超えの可能性があり、2社を伊藤忠が追う。
空前の活況に沸く商社の業績を分析する。
三菱商事は資源・非資源事業で、幅広く資源高やインフレの恩恵を受けた。LNG(液化天然ガス)事業は、天然ガス価格高騰と持ち分量(出資比率に応じた生産量)増で、前年同期比254億円増の652億円、北米不動産投資会社Diamond Realty Investmentsは市場が活況に沸き、前年同期比34億円増の102億円だった。
円安や原料高の悪影響も出てはいる。伊藤ハム米久ホールディングスは前年同期比で3億円減、アメリカで豚肉処理・加工・販売を手掛けるIndiana Packers Corporationからの取り込み利益は、前年同期比で35億円減と苦戦した。ただ全体として、円安・原料高・インフレのプラスがマイナスをかき消す結果となった。
中西勝也社長は
「通期業績予想は1兆300億円だが、市況や円安を除いた実力値は6500億円。今後はこの実力値をいかに底上げしていくかが課題だ」
と語った。
三菱商事・三井物産を追うのが伊藤忠だ。同社は上期決算発表に先立つ10月、2023年3月期最終利益予想を7000億円から8000億円に上方修正していた。
2022年4~9月期最終利益は前年同期比3.5%減の4830億円だった。
「非資源ナンバー1商社」を掲げる同社ではあるが、原料炭や原油の価格高騰によって恩恵を受けたことは三菱商事や三井物産と変わらない。例えば、豪州で原料炭や鉄鉱石を生産する「ITOCHU Minerals & Energy of Australia(IMEA)」からの取り込み利益は、前年同期比微増の984億円に上る。
ただし、資源事業の割合は三菱商事・三井物産に比べて低く、非資源事業でコツコツと収益を上げている。取り込み利益は小粒ではあるが、自動車販売事業「ヤナセ」(取り込み利益は前年同期比9%増の58億円)や北米の建材の製造・卸・販売事業(同前年同期比15%増の157億円)が好調だった。
伊藤忠は個別のグループ会社の収益管理を徹底しており、小粒の収益を積み上げることが身上だ。
それは、2022年4~9月期実績でグループ会社の8割が黒字であり、黒字会社からの取り込み利益が4546億円なのに対して、赤字会社からの取り込み損失が138億円にとどまるという数字からもうかがえる。
最終更新日:11/14(月)10:01 BUSINESS INSIDER JAPAN