今や多くのブランドから発売されている「大きな胸を小さく見せる目的のブラ」。そのイノベーターが大手下着メーカーのワコールで、2010年4月に発売開始以来、徐々に支持を集め、累計155万枚を売り上げるロングセラーとなっている。バストを「寄せて上げる」「谷間メイク」“谷間需要”の時代の中で、「小さく見せる」ことに着目したいきさつとは。社会背景に伴うブラジャーの需要の変化や、女性のバストのコンプレックスに応えて進化してきたブラジャーの未来の姿について、ワコールに話を聞いた。
かつて「寄せて上げて谷間クッキリ」というキャッチフレーズがあったように、女性の胸のコンプレックスと言えば「胸が小さいこと」。「豊かなバストこそ女性美の象徴」という風潮はたしかにあった。
「バストを盛る文化が流行し始めたのは80年代のバブル期。ボディコンに代表される体のラインを強調したファッションの流行に伴い、それまでバストをナチュラルに整え安定させるものだったブラジャーにも"メリハリのあるバストメイク"という機能が求められるようになりました。ファッションの流行とブラジャーの機能は常に連動しています」
しかし女性のボディラインは流行に関係なく、今も昔も多様のはず。現代の胸の大きな女性たちは、どのようなことにコンプレックスを抱き、「小さく見せるブラ」を歓迎したのだろうか。
「お客さまからは『シャツのボタンの隙間が目立たなくなった』『バストの飛び出す感じを納めてくれてTシャツを着ても胸だけ強調されなくなった』『形よくボリュームをスッキリさせてくれるのでアウターの幅が広がった』といった声をいただいています。やはりファッションに関することが多いのですが、『男性の目線が気にならなくなった』という回答も少なくありません」
ホームページで紹介されているUSER'S VOICEには「スーツの胸を強調してしまうのが嫌だった。『小さく見せるブラ』はスーツを着る際になくてはならない存在になっている」との声もあった。バブルの時代と比べてはるかに女性の社会活躍が当然のこととなった現代、1人のビジネスパーソンとして働く上で、図らずも女性性を強調してしまう「大きな胸」へのコンプレックスがそうした声からも垣間見られた。
最終更新日:11/10(木)14:40 オリコン