長崎市の三菱重工長崎造船所で勤務中に粉じんを吸ってじん肺などになったとして、下請け会社の元従業員と遺族計30人が三菱重工に計約6億3400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、長崎地裁は7日、同社に対し、原告20人に計約1億2200万円を支払うよう命じた。一部の原告については、作業と病気との因果関係が認められないなどとして請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
原告は下請けの元従業員13人と、死亡した元従業員5人の遺族17人。18人の元従業員は1955~2014年、下請け会社に雇用され、同造船所で溶接や組み立て、防熱工事などの作業に従事した。
天川博義裁判長は、三菱重工には下請け従業員への安全配慮義務があったと指摘。「平成初期(1990年ごろ)までに講じた粉じん曝露(ばくろ)防止措置は不十分で安全配慮義務に違反した」として、元従業員18人のうち13人について同造船所での粉じん作業で病気になったなどとして慰謝料などの支払いを命じた。他の元従業員5人の請求は退けた。
判決後、原告弁護団事務局長の魚住昭三弁護士は記者会見で「全員が認められなかったのは不当。控訴し、高裁で三菱重工の責任を認めさせたい」と話した。
三菱重工は「当社の主張が一定程度認められたと受け止めている。今後の対応は判決文を精査し、検討したい」としている。
同造船所のじん肺被害を巡る訴訟は今回が第3陣。三菱重工に直接雇用された元従業員77人(一部は死亡し遺族が原告)の第1陣訴訟は、02年に同社が計12億8000万円を支払うなどの内容で和解。直接雇用と下請けの元従業員39人の第2陣訴訟は、同社に計約5億6100万円の賠償を命じた福岡高裁判決が09年に確定した。【高橋広之、松本美緒】
最終更新日:11/7(月)18:50 毎日新聞