社名や目的を明らかにせずにマッチングアプリを介して違法な勧誘行為をしたとして、今年10月に消費者庁が「日本アムウェイ」に6か月間の取引停止を命じた。今回、過去に約500人を勧誘したという元アムウェイ会員や、今も現役で活動するアムウェイ会員が、“違法な勧誘方法の実態”を語った。
師匠から「大金持ちになれる」と言われたこともあり、アムウェイの販売会員となったAさん。自身が勧誘された時と同じく、マッチングアプリを使ってファステイングに女性を誘うようB氏から指示されたという。
【B氏からのメッセージ】
「ファステイングするまでは、できるだけマメに連絡しといて。連絡途切れたら、やるのかやらないのかわからなくなるから。SNSだから特に」
「マメすぎたら恋愛になるから、バランス良くね。これが一番難しいわけよ。ひとまず、ファスティングやるまでは、連絡するということを覚えてくれたらいいです」
特定商取引法では、勧誘目的であることを事前に告げずにネットワークビジネスの勧誘を行うことは禁止されているが…。
(Aさん)
「あんまりよくないんじゃないかなというのは、(アプリをやっている人たちは)やっぱり恋愛目的なので、その人たちをだましているのではと思っていたんですけれども、違法性があるとそこまでは認識していなくて。(Qアムウェイから勧誘でこういう行為はしてはいけないとは?)特になかったですね」
マッチングアプリでのやり取りの文言はB氏自ら考えたという。B氏からの指示内容をみると女性ごとに対応を変えていたのがわかる。
【B氏からのメッセージ】
「かなこ。ジムに3か月通った分くらい引き締まると聞いてやりましたが本当に変わるのでびっくりしました」
「ちよ。ぱす」
「H。ぱす」
「ゆり26。ぱす」
「ぱす」は勧誘が成功する可能性が低く、「やり取りを止めろ」という意味だ。さらにB氏の指示でマッチングアプリでの勧誘マニュアルを作ったという。そのマニュアルに書かれていた“黒丸の文言”は、ファスティングに興味をもってもらうためのきっかけの言葉だ。
【勧誘マニュアルに書かれた黒丸の文言】
「ジムに通うとかそういうものではないから楽なんですよね。一度だけレクチャーしてもらって、あとは好きな時にやるだけです」
興味を示した相手には続けてメッセージを送り、その後、マニュアルに書かれた“青丸の文言”を送る。
【勧誘マニュアルに書かれた青丸の文言】
「ぼくはレクチャーやサポートはただでしてくれるインストラクターさんだったのですごく始めやすかったですよ」
青丸は押しの一言。無料でファステイングの指導を受けられると伝えて、アムウェイの商品購入に繋げるという。このマニュアルはAさんとB氏を含めたグループ9人で共有していたという。
マッチングアプリを使った組織的な勧誘は2年間続き、Aさんは約500人を勧誘したという。しかし、赤字が続いたことからAさんは今年4月、会員をやめることを決断した。
(Aさん)
「アムウェイから入る収入って(月額)1000円ぽっきりとか、高くても(月額)5000円とか。自分ってなにやっているんだろみたいな、ばかじゃないのか、お金も無駄にしているしみたいな。(アムウェイの)ビジネスを思い切ってやめようと思いました」
今、冷静になって考えると、当時の勧誘行為は法に抵触していたという。
(Aさん)
「(だました女性に)まず一言目には申し訳なかったと言いたいです。今振り返って思うのは、言いたくないような黒歴史をつくってしまったな、というのが正直な本音です」
法に抵触してまでなぜ勧誘活動を行うのか。神奈川県に住むアムウェイの現役会員(25)は「厳しいノルマが背景にある」と指摘する。
(アムウェイ現役会員)
「チームの圧力というものがあると思いますね。自分を紹介してくれた人が自分の上司みたいな感じで、『今月何人紹介するの?』と聞かれて、『10人って言ったね?じゃあ絶対頑張ろうね?』『できてる?残り15日だけど?』という、結構詰められて(違法な勧誘を)される方が多いんじゃないかなと思いますね」
この男性が2年間の勧誘活動で得た収入はわずか5000円。だが今後もアムウェイの会員を続ける考えだ。
(アムウェイ現役会員)
「今は会社を辞めて転職活動中なので、(アムウェイは)あくまでも副業。数年後には自分の頑張りによっては不労収入(働かずに得る収入)が得られるということもあるので、結論としては続けていくと思いますね」
「お金持ちになりたい」。そんな夢を持ち、勧誘に精を出す若者たち。だが夢を叶えるために人をだますことは決して許されない。
(2022年11月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)
最終更新日:11/3(木)20:58 MBSニュース