世界が注目した(? )商標を巡る裁判での勝訴確定から5年。あの頃、一世を風靡した「フランク三浦」の名を最近あまり聞かなくなった。時計業界は高級時計の売れ行きが好調だと話題になる中、高級時計パロディのフランク三浦に何か“おこぼれ”的な影響はあったのか? 昨今の円安の影響は? 同ブランドを展開する、大阪市のディンクス・下部良貴社長に聞いたところ、低い山と深い谷があった5年間と、ある企みが明らかに。【華川富士也/ライター】
当時は注文以外の問い合わせも驚くほど来た。
「全く知らない人から“会いたい”と電話がきたり、講演やテレビ出演、取材の依頼…僕が取っただけでも1日に50~100件はありました。フランスからカタコトの日本語で取材を受けたこともありましたし、“あなたの半生をテレビ番組にします。つきましては800万円払って下さい”てのもありました(笑)。営業担当者の電話もずっと鳴っていて、実は高裁判決が出た日に入社した人がいたんですが、電話が鳴りっぱなしでろくに話もできず、“こんな忙しい会社、無理です”とその日のうちに辞めてしまいました」
その後、最高裁で勝訴が確定したことも話題になり、2018年には「フランク三浦」のライセンス商品の販売が始まった。それが<効力は一切証明されていないが、買えば幸せになる念を込められたといわれる奇跡の財布>だ。さらに、ゴルフクラブのライセンス販売、自社でのゴルフキャリーバッグなどの販売も始めた。裁判での勝利を経て、フランク三浦は“ブランド”として時計以外にも進出していた。
こうした厳しい状況の中で、下部社長は改めて業務を見直し、フランク三浦の可能性に気づいたという。
「フランク三浦の時計の売上げはピーク時の10分の1とかですが、ライセンスの財布が年に1万個売れたり、ゴルフ関連グッズが好調で、ブランド全体の売上げは時計のピーク時のちょっと下ぐらいまで上がってきてたんです。SNSで若い子が“親がしてた。懐かしい!”と時計を買ってくれてるのをよく見ますし、昔出した『マカオ』という文字盤にサイコロやルーレットが入った廃盤モデルが海外でバズってるらしく、100人ぐらいから問い合わせが来ました。商談では“フランク三浦、作ってます”と言うと反応が全然違って、話が深まるんですよ。思ってたよりずっと認知と信用がありました」
そこで改めてフランク三浦などの自社ブランドに力を入れていくことにしたという。
「フランク三浦ブランドをアクセサリー、お菓子、ふりかけ、ラーメン、カレー、納豆……など、色々なジャンルに展開していこうと考えてます。また最近、僕らとは別のパロディブランド『THE PORK FACE(ザ ポークフェイス)』のコラボ時計を作らせてもらったんですが、これまで200社とやらせていただいた企業コラボ時計も積極的にやっていきます。もう一つの自社ブランド時計、ギラギラでアジアウケがいい『ダニエル・ダグラス』も押していきます」
「ザ ポークフェイス」については、年末からディンクスがオフィシャルライセンスグッズを販売していく予定だという。
最高裁での勝訴確定から5年。その間、同社は、知名度が上がったチャンスと弊害、そして、消費増税や円安によるピンチに振り回されていた。荒波を乗り越えてたどり着いたのは「フランク三浦」ブランドの再興。これからまたフランク三浦を目にする機会が増えるかも?
最終更新日:11/3(木)15:23 デイリー新潮