買い取り終了も 変わるCDの価値

アナログレコードの人気が加熱するなか、先ごろ大手レンタルビデオ店で中古CDの買取を終了することが発表された。昨今は音楽もサブスクリプションやダウンロードなどで消費されており、一部のプレミアを除くCDの価値が落ちている印象はある。かつてはCDのミリオンセールが話題になっていたが、昨今は複数の形態別だったり、特典付きのCDが登場し、個人が同じCDを複数枚持つことも当たり前の時代に変わってきている。今後CD市場はどのような道筋をたどるのか? “エコストアレコード”として全国で中古レコード・CDの買取りを担っているFTF株式会社の担当者に話を聞いた。

「アメリカではその2000年代なかばに全米のタワーレコードさんが閉店しています。日本でもダウンロードの需要が高まると言われていましたが、想像していたよりはCDの売上に変化はありませんでした。ですが2010年代になり、ダウンロード、YouTube、サブスクが増えていくに連れ、CD自体の需要が下がった印象が。新品だけでなく中古も需要が落ちたタイトルは多い」

 CD全盛期ではCDをコレクションして自分だけの棚を作って並べる・それを眺めるのも一興だった。だがZ世代においては、そもそもCD自体を手にしたことがないという人もいる。こうした状況を救ったものの一つが、アイドルソングのヒットだった。一家に1枚だったCDが、個人で1枚、さらには個人で数枚に。アーティストを応援する価値基準としてあり続け、曲そのものが持つ価値とは別軸でのCDの価値が提示された。

 「アイドルソングというのは『恋するフォーチュンクッキー』に代表されるように、音楽マニアから見ても価値のあるサウンドを追求していたり、新進気鋭のアーティストが曲を寄せ、最新のトレンドを取り入れたり、実験的なサウンドを試みたりするなど、“音楽”そのものに“価値”があるものが多い。しかし、あまりにも数多く世の中に流通してしまう部分は否めず、CDを中古買取りで依頼していただいても、“中古市場”的には価値が低くなる。値段がゼロになってしまうことも。販路を考えたり、買い取ったものをセット売りをするなど工夫をしていますが、買取が厳しいといった状況になることもあります」

 同社では、「厳しい状況に変わりありませんが、コレクターズアイテムとしてCDの価値を広げていきたい。今後レコードのように変容する可能性にも期待する」という。

「昨今のアナログレコードの流行を見ると、CDというのは、レトロな価値観が付与されたレコードと、最新のダウンロード、サブスクの間で、ふわふわとした位置にとどまっている。ですが今もCDのコレクターはいますし、プレミア価値のあるCDもある。サブスクやダウンロードでは表現できない“音質”にもこだわれる。レコードが再注目されたように、今後CD、中古CDも復活の可能性はあります」

ちなみに現在、プレミア価値がついているのは例えば、ビートルズの「アビーロード」。これは許可なく本国のアナログ音源を用いたバージョンであったため、回収された事故物件であり、世の中にあまり出回ってない。ほかマイケル・ジャクソンであまり流通してないCD。また意外なことに、ビデオゲーム『ドンキーコング』のサウンドトラックはCDでしか販売されておらず、高額で買取が行われている。

 ほかメタリカやピンク・フロイドも初盤は帯の種類が違い、その帯がなければ数千円だが、あると数十万円になったりもする。“希少価値”、それは中古CDでも重要なキーワードだ。昨今、高値がついているのは90年代のアメリカのインディーズのギャングスタラップ。これらは自主制作でCDしか発売されてないことから、希少価値がある。

 また、昨今のレコードブームがCDブームにつながる可能性がある。「レコードは、購入し、針を落としてやっと音楽が鳴る。音楽と“向き合う”という“体験”に結びつくのです」。思えばCDもそうだ。予約し、店頭へ買いに行き、予約特典などももらい、ワクワクしながら帰宅、いよいよプレイヤーへ挿入…。音楽にたどり着くまでにいくつもの工程があり、それをこなすことも醍醐味になっていた。いつでもどこでも気軽に聴けるサブスクとは異なり、“どんなシーンで聴くか”という部分でもCDであるからこそのこだわりが強く出ていたのではないか。

 過去の8cmの縦長シングルもその形状ゆえのユニークなデザインがあったりする。レコードでもデジタルでもない音楽も存在する。「CDでしか聴けない」。そういった音楽もあるため「CDが終わったとはまだ思いたくない。時代の流れで、例えばインフルエンサーの影響などで、CDに価値がつく時代が来るかも知れない」。

 “価値”とは不思議なもの。ゴッホの絵画にしても生前はまったく売れなかったが死後、高額で取引されるようになった。同社は「エコストア」を名乗っている。廃棄は可能な限り避けたい。今、あなたの手元にあるCDも実は将来突然、“価値”が付与されるかも知れない。完璧に不要なものなど、世の中には、どこにも存在しないのだ。

(取材・文/衣輪晋一)

最終更新日:10/31(月)13:03 オリコン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6443232

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