急速に普及してきたスーパーやコンビニなどの「セルフレジ」。商品のバーコードの読み取りや精算をすべて客側で行い、非対面・非接触で済むため、便利に感じている人は少なくありません。でも、セルフレジでの何げない行為が「もしかして万引きを疑われた?」と思わせるケースも出てきているようです。不正を疑われないためには何に注意をしたらいいのでしょうか。万引き対策の専門家、伊東ゆうさんに聞いてみました。
「セルフレジにて万引きと思われた?」のタイトルで、読売新聞の掲示板サイト「発言小町」に投稿したのは、トピ主「Sara」さん。ホームセンターのセルフレジで、商品代金を支払った後に、その場で背負っていたリュックを下ろしてその商品を入れようとしていたら、店員が走ってきて、「お客様、商品にシールを貼りますね」と声をかけられました。そして、その店員は、購入済みの3個の商品のうちの1個にだけシールを貼り付けて、ほかのところに行ってしまったそう。
「もしかして自分が万引きをしたと思われたのか」「スキャンがきちんとされているか画面で確認しながらだったし、支払いも完了してレシートも出していたのに」「なぜ商品1個にだけシールを?」と家に帰ってからもモヤモヤする気持ちが収まらない「Sara」さん。発言小町で「みなさん、どう思われますか? 不正など勘違いされないように気をつけていることがありましたら、教えてください」と呼びかけました。
この投稿には、60件近くの反響(レス)がありました。「万引きを疑ったわけではない」という書き込みが目立ちます。
「『買い物袋なし』の対応で、シールを貼ったんだと思いますよ」(「わかめ」さん)
「お会計済みという店側からの配慮だったんじゃないですかねぇ? 私がよく行くスーパーでは、レジ係がいるレジでもセルフレジでも、エコバッグに入らなそうなくらい大きな商品(トイレットペーパーやティッシュBOX、お米10キロなど)には、勝手にテープを貼られます。これは、お会計済みの証拠にもなります」(「ヴィセ」さん)
一方、「レジを始める前に、レジ袋を購入するか自分のエコバッグを使うにしても、決まりでセットしませんか? 購入したかどうか分からない中途半端が誤解を招くんですよ」(「cloud」さん)などと、トピ主さんの行為を戒めるコメントもありました。
トピ主さんと同じような体験をした人もいました。
「エコバッグを忘れてしまったとき、私のカバンは重すぎてエコバッグ代わりにはできませんでした(重すぎるとエラーが出ることがある)。セルフレジでレジ袋もカバンもセットせずに会計を済ませ、購入したものを作荷台に運んでカバンに入れようとしたところ、店員さんが来て、『シールお貼りしますね』と言われました」(「なの」さん)
「買ったのがひとつだけだったので、マイバッグもセットせず、セルフレジで会計し商品を手に持って立ち去ろうとしたら、お店の人が『シール貼りますねー』と貼ってくれました」(「くろみ」さん)
セルフレジへの戸惑いの声も寄せられています。
「肉が2パックあったからまとめてビニールにいれようとして、スキャン後の台に置かずに次をスキャンしようとしたら注意のアラームと『スキャン後の商品を台にのせてください』って案内があった。ああ、重量チェックかと思いながら何て不便なシステムだと思った」(「お匿さん」さん)
「セルフレジは、不正する気もないのに毎回疑われている、監視されている感じが居心地悪くて」(「豆苗」さん)
セルフレジを巡っては実際に、お客の悪意のない精算ミスが、店員に万引きと間違えられてしまうケースも発生しています。万引き対策専門家の伊東ゆうさんは、保安員として数多くの万引き犯に接触してきた経験から、店舗でできる万引き防止対策とともに万引き犯と疑われないための顧客側のマナーを呼びかけています。
「客がバーコードの読み取りから精算までを行うセルフレジというのは、万引き犯にとっては、売り場で商品を盗むよりもたやすく、しかも、検挙されたときに『勘違いしていただけ』『気づかなかった』と言い抜けしやすい面があるんです」と伊東さんは話します。
例えば、購入する商品のうち一部の商品だけをスキャンせずに未精算のまま持ち帰り用のカバンに入れたり、バーコードの部分に指を絡めて読み取りにくくしたうえで個数をごまかして精算したり。店で問い詰められても、「イヤホンをしていたから音が聞こえなかった」「自分は買ったつもりだった」と主張するケースもあるそうです。
「投稿された方の場合は、単に確認のためのシールを貼られたということですから、万引きを疑われたわけではないでしょう。むしろ、店にとってはその方が万引き犯と疑われないようにしたという意味です。イラッとされたかもしれませんが、そうした声かけが常に行われていると抑止効果もあります。店内での声かけ自体を悪く取らないでほしいですね」と伊東さんは話します。
では、万引きと勘違いされないために客はどんなことを実行すればいいのでしょうか。
伊東さんは次の3点を挙げます。
<1>店内に余計な荷物を持ち込まない
使用しないレジ袋、カバンの口は閉めておく。エコバッグもレジで精算するときまではカバンにしまっておく。
<2>袋のセット、バーコード読み取りなどは指示通りに
スキャンする際は慌てずに一個一個の商品を確実に行う。スキャンミスしてしまう可能性があるので、同時に複数の商品を手に持たないようにする。
<3>カバンに手を入れる頻度を減らす
財布などセルフレジの精算に必要なものはあらかじめカバンから出しておいたほうが無難。未精算のものを入れたと疑われることもなくなる。
「いまは防犯カメラがない店舗のほうが珍しいくらいで、どこに行っても、人の目、カメラの目があります。それなのに万引き犯はなかなか減りません。悪質な万引き常習者がセルフレジを狙っていることは確かです。そんな中で人目を気にすることなく買い物をするためにも、この3点はぜひ実行してほしいです」と伊東さん。
セルフレジの普及など、どんどん変わっていく買い物風景。ちょっとしたことが悪意のある行動と受け取られるとまで考えなくてはならない時代なのかもしれません。買い物のときには気をつけようと改めて考えさせられました。
最終更新日:10/28(金)16:36 大手小町(OTEKOMACHI)