職場で不当な扱いを受けた従業員が労働組合に入って会社と団体交渉し、経営者に改善を求めても適切に向き合ってもらえず、問題解決に至らないトラブルが起きている。労働組合法は企業のこうした態度を「不誠実団交」として禁じているが、国の救済制度に駆け込む働き手は後を絶たない。会社の姿勢がハラスメントやいじめなどを長引かせる例も見受けられ、労組はルール順守を求めている。
「今後、自分に意見をする者は今すぐこの事務所から出て行くように」
2018年夏、福岡市の事業所。50代と40代の女性は、男性上司の新任のあいさつに身を固くした。管理職はこの上司と、同じ頃に赴任した別の男性。その下に女性2人と男性職員。新体制になり、いびつなルールが始まった。
労働組合法は、会社が労組の団交を正当な理由なく拒むことや、適切に交渉しない不誠実団交を「不当労働行為」として禁じている。団交の際、使用者が根拠を示さず主張を押し通すほか、決定権のない人を出席させることも該当するとした判例がある。ユニオンは事業所の対応を問題視し、早期解決を求め続けた。
経営陣は今年7月になり、問題を改める姿勢を示した。交渉開始から既に1年9カ月。「話し合いが引き延ばされた上、今もいじめはある。納得できない」。女性2人は不信感を抱えつつ、仕事を続ける。
憲法が保障する労働者の団結権、団体交渉権などを守るため、労働組合法が使用者に対して定めた禁止行為。働き手が労組に入ったことを理由に、解雇などの不利益な取り扱いをすること▽団交の拒否▽団交への不誠実な対応-などが該当する。労組や組合員はこうした行為を受けた場合、各地の労働委員会に救済を申し立てることができる。労働委が審査して不当労働行為と判断すれば、是正を求める救済命令を出す。
最終更新日:10/26(水)10:38 西日本新聞