地方行き覚悟して パタハラ今も

男性の育児休業取得を巡り、新たな仕組みが10月から始まった。出生直後に取れる「産後パパ育休(男性版産休)」の創設に加え、従来の育休も2回に分割して取れるようになり、最大4回まで休業可能に。夫婦が交代で育休を取りやすくなった。育児への関わりは、職場復帰後のモチベーション向上につながるとのデータもあり、専門家は会社側も含めた社会全体の意識改革の必要性を訴える。(中村翔樹)



■計画的に活用

東京都内に住むコンサルティング会社社員の男性(31)は9月1日に長女が生まれたばかりの新米パパだ。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が続くが、「泣き声がしたら、あやしに行きます」と話す。

体重はすでに5キロほど。別会社に勤務し、現在は育休中の妻(30)は、抱っこするのもひと苦労という。男性は出社が週1回程度。在宅勤務中は合間を見て娘の機嫌に気を配る。

今回の新制度では、育休の「分割取得」に最もメリットを感じるという。

改正育児・介護休業法は4月以降、段階的に施行され、10月からは、これまで子供1人につき原則1回に限られていた育休(1歳まで)が、2回に分けて取れるように。加えて、子供の出生から8週間以内に計4週間取得できる「産後パパ育休」にも2回の分割制が適用され、計4回、育児で休業できることになった。

男性は今後、仕事が一段落する来春に1回目、その後、妻の職場復帰時期などに合わせて2回目の育休取得を想定している。「仕事と育児の両立の中で、夫婦それぞれに今後見込まれる変化のタイミングに応じ、休める。計画的に活用でき、気持ちの面でもありがたい」と話す。

■地方行きを覚悟

今回の施行分では他に、1歳時点で保育所に入所できていないなど、特例的に認められる最長2歳までの育休について、1歳または1歳半時点に限られていた休業開始時期を柔軟化。例えば子供が1歳3カ月の時点で妻が育休を切り上げる必要が出ても、夫はその時点から休みを取得できる。

施策はいずれも男性の育休取得を促すが、厚生労働省によると、令和3年度の取得率は約14%。国が7年までの達成を目指す30%とは開きがある。男性の育休取得率の伸びが鈍いのはなぜか。

父親の子育て支援事業などを手がけるNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の安藤哲也代表理事は、男性が育休を理由に嫌がらせを受ける「パタニティー(父性)・ハラスメント」(パタハラ)の存在を指摘。「『課長の君が抜ければ、会社の業績はどうなる』『復帰後は地方支社行きを覚悟してくれ』など、いまだに相談として聞こえてくる」と明かす。

男性側にも、キャリア形成に悪影響があるのではないかといった心理的なハードルが根強いという。

■命を守る

明治安田生命が8月、0~6歳の子供がいる既婚男女1100人に実施したアンケートでは、育休を取った男性(全体の23・1%)の約4割が職場復帰後、仕事へのモチベーションが上がったと回答。「夫婦関係が良好になり仕事にも意欲が出た」「気持ちがリフレッシュできた」などが理由に挙がった。仕事への意欲が高まれば企業側にもメリットがありそうだ。

一方、安藤さんは、「多くの女性は産後、急な不安感などに襲われ、鬱状態に至るケースもある。そのとき、そばにパートナーがいる意味は大きい」とし、男性育休が女性の命を守ることにもつながると主張。「育休の本質的な意義を社会全体が認識し、今回の制度改正を、風土改正の契機とすべきだ」としている。

最終更新日:10/20(木)10:51 産経新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6442170

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