秋の観光シーズンに加え、政府の観光振興策「全国旅行支援」が始まって初の週末となった15日、関西の観光地には海外からの個人客や国内旅行者らが足を運んだ。旅行業界関係者が「予約状況をみるとコロナ禍前の水準に戻っている」というほどの人気ぶり。ホテルや飲食店などの期待は高まる。ただ旅行予約サイトにつながらないといった状況に加え、新規予約の受け付けを停止する事業者も。このため政府は国費の追加投入も視野に入れている。
大阪・ミナミの繁華街にも国内旅行を楽しむ人のほか、外国人観光客の姿がみられた。
午前9時半。道頓堀の観光名物として知られる巨大看板「グリコサイン」の前には、カメラ片手にポーズを取る観光客の姿でにぎわっていた。岐阜県羽島市から友人と日帰りで来た会社員の女性(19)は「気軽に日帰りで行ける大阪を選んだ。これからいろんなところを旅行したい」と笑顔をみせた。
海外からも観光客が。韓国・釜山の男子大学生(22)は父親と2泊3日の予定で来日。「日本は一番近い国なので今回日本を選んだ。日本の文化に興味があり、旅行に来られてうれしい。今度は北海道にも行ってみたい」と話した。
初秋の京都でも、嵐山や清水寺といった主要な観光地に国内外から観光客が訪れている。
あぶらとり紙が看板商品の「よーじや」(京都市中京区)の橋本知紗さん(27)は「第7波が弱まった8月ごろから客足が戻り始めた。これから紅葉シーズンなので大いに期待したい」。居酒屋「まんざら団栗(どんぐり)橋」(下京区)の林貴弘店長(46)も「最近は海外からの客も来てくれる」と変化を実感。「感染の影響もないまま続いてくれれば」と話した。
神戸の観光地もにぎわいを取り戻しつつある。「観光客に商店街の中華料理を楽しんでもらいたい」。豚まんの老舗「老祥記」店主で、南京町商店街振興組合理事長の曹英生さん(65)はこう話す。
曹さんによると、商店街の多くの店舗がコロナ禍で打撃を受けた。感染再拡大への不安より社会経済活動を優先してほしいという願いが強く、業績回復への期待は大きいという。
観光庁の旅行・観光消費動向調査によると、コロナ前の平成31(令和元)年の日本人国内旅行の消費額は21兆9312億円で延べ旅行者数は5億8710万人だったのに対し、昨年は9兆1835億円、延べ2億6821万人とコロナ禍の影響を大きく受けた。
全国旅行支援は46道府県で11日からスタート。東京は20日から始まる。1日当たりの入国者数の上限はなくなり個人旅行も解禁に。ただ3回のワクチン接種証明書か出国前の72時間以内の陰性証明書の提出は必要だ。期間は12月下旬までとされ、旅行代金の40%を国が補助する。
旅行業界関係者によると予約サイトなどへの予約が殺到してアクセスしにくい状況が続いている。11日以前に予約を入れた人の中には改めて予約し直してもらうケースもあるという。
近畿大国際学部3年の北島航生さん(21)は「初日からつながらず予約が取れない」とやきもき。「学生にはありがたい制度」としながらも「予定を先延ばししようと思うが予約の受け付けが停止されないか心配」と話す。
すでに新規予約の受け付けを停止する事業者も出ているためだ。国は「Go To トラベル」の予算の一部の5600億円と「県民割」向けの3300億円の残額を原資とし都道府県に配分。この予算を旅行会社や予約サイト、宿泊施設に配り、事業者がその範囲内で商品を販売するが、割当枠に達すれば受け付けができない。
旅行業界関係者は「旅行需要の一気の高まりで当初予約した段階より高い料金になっている場合もある。早めに予約状況を確認してほしい」と話している。
最終更新日:10/15(土)13:25 産経新聞