企業倒産 減少から「増加局面」へ

2022年度上半期(4~9月)の企業倒産は3123件となり、歴史的な低水準となった前年同期(2938件)を上回り、年度上半期としては3年ぶりの増加に転じた。2022年9月の倒産も583件発生し、前月(493件)、前年同月(512件)をそれぞれ上回り、5カ月連続の前年同月比増加。企業倒産は長らく続いた減少基調から増加基調へと転じている。

 負債総額は1兆7657億9500万円(前年同期5784億7000万円)に急増し、5年ぶりの1兆円台となった。6月に民事再生法を申請した自動車部品大手のマレリホールディングス(埼玉、負債約1兆1856億2600万円)による影響が大きい一方で、この事例を除いた負債総額でも、前年同期を上回った点を注視する必要がある。倒産1社あたりの負債額平均(トリム幅上下1%)は約8000万円で、前年同期(7300万円/社)から増加。2014年度上半期以来8年ぶりに8000万円台へ到達した。大型倒産の発生は抑制されているものの、コロナ関連融資などを背景に膨らんだ借入金が押し上げる形で、倒産企業の負債額が足元でじりじりと増加している。

こうしたなか、岸田首相は9月30日の閣議で、「物価高・円安対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を3本柱とする30兆円規模の総合経済対策を策定するよう関係閣僚に指示した。なかでも、新たに検討される「私的整理円滑化法案」は、全債権者の同意を必要としない迅速な手続きを優先した債務整理方針とされており、過剰債務を抱えた企業の財務正常化や、経営内容が極度に悪化する前に予防的な対応を促す効果が期待される。課題はあるものの、実現すれば最終手段たる法的整理が回避される動きが一時的に強まる可能性はある。

 現状の倒産件数はリーマン・ショック時ほどの絶対数はなく、金融機関の支援スタンスもリスケ対応を含め柔軟に行われている。ただ、「円安」「物価高」「人手不足」の三重苦で、企業を取り巻く収益環境は一段と厳しさを増している。中短期的な企業倒産は、コロナ禍でギリギリの経営を強いられてきた中小・零細企業を中心に、悪化する一方の経営環境に見切りやあきらめをつけた「息切れ倒産」が押し上げる形で、増加傾向が続くものとみられる。なかでも、既に大幅な倒産増加が目立つ建設・運輸・サービスの3業界の動向には注意が必要だ。

最終更新日:10/11(火)13:30 帝国データバンク

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6441293

その他の新着トピック