10月に国内の値上げラッシュはピークを迎える。食品・飲料だけで6500を超える品目で値上げが予定され、価格引き上げの波はハムやソーセージ、マヨネーズ、焼き肉のたれ、チーズ、ペットボトル飲料など広い範囲に及ぶ。
これまで年内最多だった8月の2.5倍を超える記録的な値上げ月で、この結果、年明け以降の値上げ品目数は2万を超え、値上げ率は平均で14%に達する勢いとなっている。
調査を行った帝国データバンクは「ほとんどの食品・飲料で値上げが起きている」とみている。
物価高を加速させた大きな要因の一つが7か月前のロシアによるウクライナ侵攻だ。
もともとコロナ禍から世界的に経済が立ち直るなか、供給が需要に追い付かず、去年以降、原材料や資源の価格は上昇基調をたどっていたが、ウクライナ侵攻が、それに追い打ちをかける形となった。
世界有数の原油・天然ガス大国であるロシアや、小麦の穀倉地帯を抱えるウクライナからの供給不安や輸出停滞が、需給のひっ迫を生み、エネルギーや食料価格のさらなる高騰をもたらした。
モノの値段は世界で一段と押し上げられ、8月のアメリカの物価上昇率は8.3%となったほか、ユーロ圏は9.1%、イギリスでは9.9%に達している。
急激な物価高を抑え込もうと、欧米などの中央銀行が相次いで推めているのが、政策金利の引き上げだ。アメリカのFRBは、3回連続で、通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決め、景気減速を招くおそれがあるにもかかわらず、利上げによるインフレ退治を優先する姿勢を鮮明にした。
値上げが勢いを強める一方で、賃金の上昇は進んでいない。7月の1人当たりの賃金は、物価変動を除いた実質で前年同月比1.8%減少し、4か月連続のマイナスだ。
名目賃金自体は7か月続けて伸びたが、物価上昇のペースに賃上げが追いつかず、賃金が目減りするおそれが現実のものとなりつつある。価格転嫁の遅れで収益が圧迫されやすい中小企業では、賃上げを実施する余力が乏しいところも少なくない。
エネルギー・原材料高に円安が拍車をかけた物価上昇の波は大きなうねりとなっている。根強い円売り圧力で物価が押し上げられる構図が、今後も続くことが想定されるなか、賃上げが進まなければ、家計の購買力は減退していく。
国内景気の持ち直しへの足どりは、厳しい局面を迎えている。
(執筆:フジテレビ 経済部長兼解説委員 智田裕一)
最終更新日:9/30(金)15:46 FNNプライムオンライン