激減した外食チェーン店 共通点は

2022年8月、「いきなりステーキ」を運営するペッパーフードサービスの一ノ瀬夫社長が、近年の業績不振の経営責任を明確にするため、辞任したことが報じられていた。いきなりステーキと言えば、2013年に1号店を出店してからあっという間に成長を遂げたものの、その後、過剰出店が仇となり大規模な店舗閉鎖に追い込まれ、経営危機に陥り話題になった外食チェーンだ。ジェットコースターのような同社の業績推移に関して指摘も多いが、流行り廃りの激しい外食業界ではたびたび見られる事例だ。今回は、「いきなりステーキ」と同じく、激減した「東京チカラめし」の事例を紹介しつつ、外食業の存続が難しい理由を解説する。

●「東京チカラめし」も長続きせず…外食業が続かない理由

 居酒屋「金の蔵」などを運営する三光マーケティングフーズは、かつて業態転換を見事に実行したことで有名だった。1975年、三光亭というガード下の定食屋からスタートした後、1982年には居酒屋を始め、1998年には個室居酒屋「東方見聞録」を開発。その後、個室居酒屋「月の雫」などの展開にも成功、急速にチェーンを拡大し上場企業にまで成長した。

 しかし、2008年のリーマンショック以降は、低価格均一単価居酒屋「金の蔵」業態と入れ替えていくことで、低迷しつつあった個室居酒屋業態を転換することに成功、見事に業界の有力企業としての業容を維持した(図表4)。


 ただ、2012年頃からはこの低価格業態も勢いを失い、その後は減収が続いていく。このタイミングでファストフード業態である「東京チカラめし」を投入して、再度の業態転換を準備していたのだが、「東京チカラめし」は、2011年スタート後、2年で130店舗まで急増したものの失速、2016年には事実上主要業態として記載されなくなった。


 2度目の大規模業態転換に失敗した三光マーケティングフーズは、その後も新たな業態開発を続けたが、低価格居酒屋の縮小を補える業態は出なかった。その状態でコロナ禍を迎えたため、2021年6月期には業績は売上21億円、経常利益マイナス14億円にまで落ち込んで、この会社はついに、主要事業を外食から水産物卸売に転換することになった。

 外食産業は業態の陳腐化リスクが大きく、リスク分散のためには多業態を展開しなければならないということが一般論としても言われている。とはいっても、盛衰のスピードが速い場合には、ペッパーフードサービスや三光マーケティングフーズのように、一世風靡しながらもその縮小期に翻弄されてしまうことも多い。

 特に居酒屋から出て、うまく多業態にまでもっていって平衡を保てるようにまでなるのは、コロワイドのような、ほんのひと握りの企業なのだろう。いずれにしても、外食チェーンとして持続していくことは、そんなに易しいことではない(図表5)。


●外食チェーンを長続きさせる秘訣

 最近、外食大手すかいらーくが2022年度業績予測を下方修正し、予想営業利益を100億円から5億円へと変更、100店舗の追加店舗閉鎖を実施することを発表した。これにより、すかいらーく、ファミレスに関するネガティヴな記事、報道が相次ぎ、かなり話題になっていたことはご存知かもしれない。

 しかし、これは業態の盛衰を長くみてきた老舗すかいらーくの素早い経営判断だと、個人的には評価している。業態の寿命は誰にも予測できないため、環境変化や業態の衰退の兆候には過剰反応するくらいでちょうどいいのかもしれない。

 すかいらーくという外食大手は創業時の代表的業態である「すかいらーく」という業態を残さず、複数の業態に分散、転換することで長い間、外食最大手としての地位を維持してきた。上手に業態転換を続けていくこと、これこそが外食チェーンとして長く存続するカギなのであろう。

最終更新日:9/28(水)13:20 ビジネス+IT

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6439994

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