昨今、日本国内で販売される新車に占めるMT、すなわちマニュアルトランスミッション車の割合は1%台にまで激減していると言われている。
加えて新規運転免許取得者におけるAT限定免許の割合もまた、都道府県によって多少の違いこそあれおおむね半数を超え、大都市圏では3分の2前後に達している。
このままの傾向が継続拡大し、さらにトランスミッションが不要なピュアEVの市場占有率が今以上に増すと、いずれマニュアルトランスミッション車は市場から姿を消してしまうのではないか? という推測が成り立つ。
もちろんそれもまた時代の要請ゆえと言ってしまえばそれまでだが、自動車とは実用品であると同時に、嗜好品としての一面も少なからず持っている。
個人的には、運転そのものを楽しむという要素に長けたマニュアルトランスミッション車は、その数こそ減る一方ではあっても、限定注文生産などを通じて生き残るものと考えている。
そしてその過程において、すでに生産済みのマニュアルトランスミッション車は、将来的にはレアモデルとして中古車市場で今以上に珍重され、価格が高騰する時代が来るに違いないということも。
それがどういういきさつでアメリカ車の歴史に残るマニアックモデルとなったのかというと、使用していた直列4気筒エンジンがたまたまGMの販売プロモーション戦略の一環として、1972年から当時のフォーミュラ2用レースエンジンのベースとなったことがきっかけだった。
このエンジンは、1972年当時最強とされていたレーシングエンジンコンストラクターだったイギリスのコスワースの手でDOHC16バルブヘッドを与えられ、その市販バージョンとして販売されたのがコスワース・ヴェガだったということである。
スペックからして極めてレースイメージが強かったコスワース・ヴェガはマニュアルトランスミッションのみで販売されたというわけである。
ちなみにこうしたレースカーのホモロゲモデルというスタイルに誕生の動機を持つアメリカ車の中には、同じくマニュアルトランスミッションのみの設定で販売された、
・1967~1972年型のシボレー・カマロZ28
・1969~1970年型のフォード・マスタングBOSS302
・1971年型のフォード・マスタングBOSS351
・1969~1970年型のフォード・マスタングBOSS429
・1965年型シェルビーGT350
などがあった。
一連のシェルビー・コブラもまた市販レーサーが本来の姿であり、言うまでもなくマニュアルトランスミッションのみの設定だった。
こうしたレースカーに関係が深い誕生の動機を持つマニュアルトランスミッションのみで販売された車は、スカイライン2000GTRやトヨタ1600GTなどが日本でも1960年代後半に何種類かが誕生している。
最終更新日:9/13(火)19:04 Merkmal