バイク手押しで歩道 法的にはOK

いま、ちまたではバイクブームが再燃中なのをご存じですか? 車両は販売数増加、また部品が足りないこともあり、人気車種だと現行車の中古品が新車価格を上回る“プレミア化”も。



 また、免許取得のための教習所は、場所にもよりますが新規受付を停止しており「すぐには教習に通えない」などの現象も起きています。

 その理由は、コロナ感染予防における「密を避ける移動手段」として、バイクが注目されたこと。そしてそれをきっかけに、前世代のバイクブーム時のライダーが“リターンライダー”として、再びバイクに乗り出したことも挙げられます。かくいう筆者も、学生時代以来、何年かぶりにバイクを購入し移動手段として使っています。

 かつての“バイク離れ時代”を考えると、現在のバイク人気はとても良いことなのですが、だからこそ「交通違反」や「交通マナー」に改めて気を付けるべきだと感じています。

 さて、筆者には以前から「違反ではないのか?」と気になっていることがあります。たびたび見かける【一時的にエンジンを切り歩道に入り、再度車道に戻る行為】です。

 詳しくいうと、例えば「左折の信号待ち中にエンジンを切る」→「バイクを手押しして歩道に入る」→「再び車道に入りエンジンをかけて、行きたかった方向へ走っていく」などをして信号待ちを回避し、ある意味“時間短縮”を図っていると思われる行動です。

 必ず信号待ちする筆者としては、「それってルール的に大丈夫なの?」と疑問に思うのですが、はたして道路交通法違反に当たらないのでしょうか?

「違法ではありません」と、かなえ法律事務所(神戸市中央区)の森本圭典弁護士は言います。

「道路交通法第2条の第3項には、『大型自動二輪車又は普通自動二輪車、二輪の原動機付き自転車を押して歩いている者』は『歩行者とする』とあります」(森本弁護士)。

 つまり、エンジンを切ってバイクを押しているあいだは歩行者として扱われるため、歩道や路側帯に入ることに問題はなく、再び車道に戻り走り出すのも問題がないことになります。また、この方法は左折時のみでなく【Uターン禁止の交差点で信号待ち中に横断歩道を渡って反対車線に出る】や【一方通行を歩行者として逆向きに進む】なども可能ということになります。

 なんとなく“ズルい行為”のように思っていましたが、違法ではないならライダーとしてはどんどん活用したい“テクニック”では?

 ただし、絶対に注意しなくてはいけない点があります。

「手押していてもエンジンを切っていない場合は『運転』とみなされ交通違反となる可能性があります」(森本弁護士)

 さらに、

「法律はあくまで『2輪車』に対してのもの。『三輪バイク』や『サイドカー付きバイク』はこれに当てはまらず、いかなる場合でも“歩行者”とみなされません。そもそもバイクは車体重量100kg以上となるものが多数あり、歩行者にぶつかると怪我を負わせてしまいます。よって、歩道に入るときは細心の注意が必要です」とのこと。


 いっぽう、警察の見解はどうなのでしょうか?

 兵庫県警交通企画課に聞いてみたところ、「道路交通法違反でないのであれば取り締まれませんし、『交通マナーが悪い』と一刀両断することもできません。ただ、歩道が混雑しているなど状況によっては、ライダーの行為が危険な場合もあります。可能なかぎり信号機を守り、安全に交差点を通過してほしい……というのが警察の考え」という回答が。

 法に触れていないことや道路状況にもよることから、一概に良い・悪いを明言できないものの「違反ではないがマナーとしては疑問」「できればやめて欲しい」というニュアンスでした。

☆☆☆

 現在の社会情勢にフィットする乗り物として見直され、再び人気を博しているバイク。「法律を犯していないから大丈夫」といってしまえばそれまでですが、状況判断を誤れば取り返しのつかない事故を招く可能性が大いにあります。

“時間短縮”する必要がないくらい十分な余裕を「時間」にも「心」にも持って、安全運転を心掛けたいですね。(取材・文=宮田智也 / 放送作家)

◆森本圭典 かなえ法律事務所(神戸市) 共同代表弁護士 / 甲南大学 非常勤講師
2013年12月弁護士登録。地元兵庫県で地域に根ざした弁護士活動を行う。取扱分野は、相続、交通事故、破産、中小企業のトラブルなど。甲南学園を卒業した縁から、甲南大学で非常勤講師も務める。

最終更新日:9/12(月)11:22 ラジトピ ラジオ関西トピックス

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6438444

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