道楽と批判 レース続けた豊田社長

トヨタ自動車の豊田章男社長(66)が、サーキットに通い詰めている。かつては「御曹司の道楽」と難じられることもあったが、レースの経験をクルマづくりに生かす流れが社内に定着してきたこともあり、そうした批判は影を潜めつつある。



 豊田氏は、先週末もサーキットにいた。今月3、4日、モビリティリゾートもてぎ(栃木県)で開かれたスーパー耐久レース。トヨタ車の開発を担うプロドライバーらと交代で、昨年から参戦する「水素エンジンカローラ」のハンドルを握った。

 モータースポーツは、豊田氏が2009年の社長就任以来掲げる「もっといいクルマづくり」の起点だ。走行環境が過酷なレースを通じて課題を洗い出し、スポーツカーをはじめとした市販車の開発につなげていく狙いがある。

 とくに熱心な車ファンに対しては、「平凡なトヨタ」から脱却していることを示す意味合いも持つ。

 耐久レースやラリーで鍛えられた四輪駆動のスポーツカー「GRヤリス」(2020年発売)の進化版の限定車(500台)を1月に売り出すと発表したところ、1万人を超える応募が殺到した。

 豊田氏といえば、トヨタ創業者の喜一郎氏の孫。リーマン・ショックで大赤字に陥ったさなか社長に就いた。その前からドライバーの顔を持ち、副社長だった07年から「車開発の聖地」とも言われる独ニュルブルクリンクの耐久レースに出場。「乗って楽しいクルマづくり」を追い求めていた。

 もっとも、当時は必ずしも社内の空気は好意的ではなかった。

 「御曹司の道楽だ」「リスク管理ができていない」

 経営の中枢にありながらレース参戦を続ける豊田氏に対して、社内から批判的な声が少なくなかったという。

 しかし、次第に周囲の見る目は変わった。開発の前線で性能をチェックする「マスタードライバー」として会社を率いるようになり、海外からの注目も高まった。

 F1やWRC(世界ラリー選手権)など、世界的なモータースポーツを統括するFIA(国際自動車連盟)は今年2月、最高意思決定機関である評議員会のメンバーに、豊田氏を選んだ。自動車メーカーのトップとしては初めての選出だった。

 トヨタ創業者の喜一郎氏はモータースポーツについて「オートレースは単なる興味本位のレースではなく、日本の乗用車製造事業の発達に、必要欠くべからざるものである」と書き残している。

 豊田氏も「やれ道楽だとか言われたが、(モータースポーツは)トヨタの原点」と語る。「スポーツカー、ファミリーカー、その先にある自動運転でも、もっといいクルマづくりにつなげていく」

 次のスーパー耐久レースは10月15、16の両日、岡山国際サーキットで開かれる。もちろん豊田氏も出場予定だ。(近藤郷平)

最終更新日:9/11(日)16:48 朝日新聞デジタル

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6438389

その他の新着トピック