新サハリン2参画 悩んだ日本2商社

三井物産と三菱商事は25日、ロシア極東サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について、ロシア側が設立した新たな運営会社に参画する方針を決めたと明らかにした。液化天然ガス(LNG)の調達先確保に向けた政府の要請もあり、両社は戦争を続ける国を相手に一定のリスクを受け入れて権益を維持する。ロシア側との条件交渉がまだ残っており、国内への安定供給の見通しは不透明なままだ。



 ◇「侃々諤々の意見」の末に

 「日本全体のエネルギー安全保障を踏まえた判断で大変ありがたい」。両社の方針を受け、政府関係者は胸をなで下ろした。

 ロシアのプーチン大統領は6月末に、サハリン2の事業や権益を新会社に引き継ぐよう求める大統領令に署名。その後、新会社が設立され、日本の2商社が出資を継続するか判断を迫られていた。サハリン2にはロシア政府系企業ガスプロムが約50%、三井物産が12・5%、三菱商事が10%をそれぞれ出資。約27・5%を出資する英石油大手シェルは撤退を表明している。

 これまで2商社は参画か撤退かの議論を続けてきた。ある関係者は「内部には参画に反対する人がたくさんいた」と明かす。ウクライナ侵攻で国際的に批判を浴びるロシアでの事業に関わり続けることで、企業ブランドを毀損(きそん)しかねないためだ。また、大統領令によって事業の不確実性が高まり、両社は2日発表の2022年4~6月期連結決算でサハリン2の投資価値を計2177億円分引き下げた。「侃々諤々(かんかんがくがく)の意見」(別の関係者)が交わされた結果、今回の決定に至ったのが実情のようだ。

 ◇「日本の生命線」働きかけた政府

 迷いながらも参画に踏み切る背景には、火力発電に電源の多くを頼る国のエネルギー政策がある。LNGは火力発電の燃料や都市ガスの主原料で、輸入量の8・8%はロシア産が占める。その大半はサハリン2からの供給だ。足元ではウクライナ危機などの影響で電気代が上がり、電力の安定供給が揺らいでいる。政府は24日に次世代原発の開発・建設を検討する方針を打ち出したが、目下のところサハリン2は化石資源が乏しい日本のエネルギー安定供給の「生命線」(経済産業省幹部)になっている。

 このため政府は両社への働きかけを続けた。8月に入ると経産相が両社トップと面会し、出資継続を検討するよう直接求めた。三菱商事は今回の決定について「慎重な検討を重ね、総合的な観点から判断した」とコメントしている。

 ただ、今後もサハリン2を巡る不透明な情勢は続きそうだ。ロシア政府は両社から参画の通知を受けた後、3日以内に受け入れるか判断する見通しだ。ここでロシア政府が拒否すれば両社は排除される。認められても株主間協定の協議が控えており、ここで日本側が従来より不利な条件を突きつけられる恐れもある。

 また、西側諸国の制裁に反発し、ロシアが報復措置としてサハリン2を巡りさらに揺さぶりをかけてくるリスクもはらむ。松野博一官房長官は25日の記者会見で「引き続き状況を注視し、LNGの安定供給に万全を期していきたい」と述べた。【浅川大樹】

最終更新日:8/26(金)8:22 毎日新聞

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6436763

その他の新着トピック