ドムドムバーガーV字回復 要因は

「このままなくなってしまうではないか」と悲観されていた、日本最古のハンバーガーチェーンが復活し、注目を集めている。



 1970年、マクドナルド日本上陸の1年前に誕生した「ドムドムハンバーガー」だ。最盛期の90年代には全国400店以上にまで拡大したものの、閉店が相次ぎ、一時は27店舗まで減少。ブランドの存続が危ぶまれていた。しかし、2020年度から最終黒字に転じ、息を吹き返している。

 この復活劇の立役者として、業界から注目されているのが藤崎忍社長だ。新橋で居酒屋を2店舗経営していた手腕を見込まれ、ドムドムハンバーガーへ引き抜かれた異色の経歴の持ち主だ。

ドムドムハンバーガーの再建を目指し、藤崎氏はさまざまな施策に取り組んできた。そんな中で、特に印象に残っている出来事が3つあるという。

 1つ目は19年秋に発売した「丸ごと!!カニバーガー」の大ヒットだ。こんがり揚げたソフトシェルクラブを1匹丸ごとバンズに挟んだ豪快なビジュアルからSNSで話題となり、たちまち売り切れが続出した。

 この商品から注目を集めるようになった同社の一風変わったメニュー開発のこだわりは、「ファストフードだからできない」といった固定概念にとらわれないこと。

 実際「丸ごと!!カニバーガー」は調理工数の多い商品だ。非加熱の冷凍ガニが店舗に届く。それを流水解凍し、水を切ってしっかりと拭き、粉を付けて揚げるという段取りは通常のファストフードでは考えられないほど時間がかかる。

 「ファストフードだからできること・できないことを考えてしまいがちですが、そういうことは気にせずにお客さまが喜んでくれるものを作ろうと考えています」と藤崎氏は話す。

3つ目はアパレルブランドとのコラボレーションだ。初めにFRAPBOIS(フラボア)とのコラボの話があがった際は、「これもまた、社内の反対がすごく多かった」という。

 「社内では『なぜハンバーガー屋が洋服を作らなければならないのか?』という反応でした。ただ私は、これまでとは違う新しいお客さまにコンタクトできるという点と、私自身(ドムドムハンバーガーのマスコットキャラクターの)どむぞうくんが『すごくかわいい!』と思っていましたので、どむぞうくんがどんな風に世の中に認知していけるかを試したかったので、挑戦してみることにしました」と藤崎氏は振り返る。

 フラボアからは、Tシャツ、ワンピース、ジャケット、スカート、帽子、バック、靴、靴下……と多くのコラボ商品を発売。大きく話題になった結果、BEAMS(ビームス)やniko and ...(ニコアンド)、JUNRed(ジュンレッド)といった名だたるアパレルブランドや、LOFT(ロフト)からのグッズ展開の依頼など、さまざまなコラボのオファーが来るようになった。

 そんなアパレル商品群の中でも、特に売れたのがマスクのシリーズだ。

 この商品は当初、スタッフのために作られたものだった。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた20年春、街のスーパー内にある店舗が多いドムドムハンバーガーは緊急事態宣言下でも営業している店舗が多かった。そんな中でスタッフがマスクの確保に困っていたことと、厳しい状況下で頑張るスタッフの心が少しでも明るくなるようにとの思いもあって、どむぞうくんが付いたマスクを製造し、各店舗に配布した。

 さらに、来店するお客さまもマスク不足に悩んでいるだろう――と考え、レジ横でマスクの発売を始めた。当時はマスク不足に対する社会貢献という認識だったため、350円という安価で発売のプレスリリースやSNS告知も出さず、ひっそりと販売していた。

 しかし、購入者がSNSにアップしたところ、たちまち話題に。店舗に長蛇の列を作る人気商品となった。ただし、密を避けなくてはならないコロナ禍だ。店舗での販売継続は一時中止したものの、問い合わせが絶えずECサイトを急きょ10日で立ち上げた。

 その後もECサイトの改良などを続け、マスクの販売数は累計17万枚を超えた。また、ECサイト経由の売り上げはマスクの勢いが高かった20年度で全体の10%程度、現在も売り上げの5~6%を占める重要な事業の一つとなっている。

藤崎氏は「これからも面白いチャレンジをして行きたい」と話す。

 商品については、ファストフードの枠にこだわらない方針を貫き、これからも個性的な商品を含め、おいしいだけでなくお客に付加価値を感じてもらえるようなメニュー開発を続けていくという。ハンバーガーチェーンのメニューはパターン化している印象を受けるが、そうした業界の常識や慣例に感化されずに、商品を開発していく方針だ。

 攻めの施策での話題作りも続ける一方で、守りの施策として社員教育などの経営基盤を支えるポイントにも注力していく。藤崎氏は「チャレンジは続けるけれども、基礎的な部分では地に足をつけて経営していきたい」とまとめる。

 「黒字化を目指して短期間でさまざまな取り組みを行ってきました。われわれは『思いやり経営』を掲げていますが、それがスタッフの皆さんまできちんと体系化して教育が行き届いているかというと、まだまだな点も多いと思います。これからは内部もしっかりと整えていきたいと思います」

 驚異のV字回復劇を遂げたドムドムハンバーガー。一時期は「バーガー界の絶滅危惧種」と呼ばれたブランドだが、5年後、10年後にはどのように受け止められているだろうか。日本最古のハンバーガーチェーンの底力に期待が集まる。

最終更新日:8/26(金)10:44 ITmedia ビジネスオンライン

引用:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6436699

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