春も夏も秋も冬も。老若男女、街を行く誰もがこれほどマスクを着けた年はかつて無かったでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大で2020年、マスクはすっかり生活の必需品となりました。とはいえ国別で見ればやはり温度差があって、欧米などでは着用を嫌がる人が少なからずおり、そのことが感染拡大につながったと見る向きもあるよう。
かたや私たちが住む日本・東京は、街でマスクをしていない人を見つける方が難しいほどの徹底ぶり。春から夏にかけてはあらゆる店頭からマスク在庫が消え右往左往したことも記憶に新しいでしょう。
政府が全国民に配布した通称アベノマスク、頑張って自作した布マスクなどをへて、市場に再び不織布マスクが出回るようになって以降も、
「どうせ着けるならもう楽しんだ方が良くない?」
というムードが醸成され、季節に合わせた色・柄ものまで登場するようになりました。
アパレルブランドが「2020年秋冬コレクション」などと銘打って新商品を投入するなど、飛沫(ひまつ)防止という当初の目的を超え、今やマスクはファッションアイテムのひとつに昇華されたもようです。
2020年12月11日(金)には、若者の街・渋谷センター街にマスク専門店「MASK CLUB」(渋谷区宇田川町)までオープンしました。
若い世代にとって今、マスクはどのような位置付けのアイテムとなっているのでしょうか。広報担当の坂口絵美子さんに話を聞きました。
白無地の使い捨て不織布タイプばかりだったマスクは、いつしか色も素材も多様で個性的なものに――。
東京の街を歩けば、若い女性を中心に実にさまざまなマスク姿の人を見掛けます。
「これまで必要に迫られ義務的に着けていたマスクが、洋服やアクセサリーを選ぶような感覚で着けられるようになってきています」と、坂口さんは現状を話します。
MASK CLUBでも、ブランド立ち上げ以降に発売したマスクはすでに100種類以上。カラーバリエーションまで数えると、その数はさらに増えるといいます。
真冬の今ならブラウンやベージュといった暖かみのあるカラーや、ファッションのトレンドでもあるパープル系やタータンチェック柄が人気。親子でおそろいコーデができるよう、子ども用サイズの商品も展開しているのだとか。
ちなみに、長時間マスクを着けたときの不快感のひとつとして挙げられる、ゴムひもが耳の後ろに食い込んで痛くなる現象。あの悩みを解消するアイテムまでもが、今やかわいらしいアクセサリーとして発売されています。
両端にフックが付いた、リボンやパールのあしらわれたチェーン。これにマスクの左右のゴムひもを引っかけて後頭部にセットすれば、まるでヘアアクセサリーのような見た目に。耳が痛くならないばかりか後ろ姿を華やかに見せてくれる効果まで備えています。
2020年、マスクをしなければ外に出られない状況になるなんて、誰も予想だにしませんでした。しかし反面、コロナがなければここまでマスクの種類が増えることもなく、マスクが進化を遂げることなどおそらくなかったでしょう。
この先もまだまだマスクを手放せない状況は続きます。
嫌だなあ、面倒だなあ、と悲観的になるのではなく、「この際もう楽しむしかない!」と開き直り、状況を受け入れるばかりか芸の細かいアイテムを次々と生み出す日本人。そのたくましさにあらためて感服せずにいられない、2020年のコロナ禍マスク進化論です。
最終更新日:12/20(日)21:31 アーバン ライフ メトロ